平安幻想秘聞録・第三章 2


(2)
 八方美人に振る舞うのは辛いだろうが、佐為の愛する碁を打ち続ける
ためには、それも仕方ないのだ。
 あいつ、そういうとこ、不器用だからな。大丈夫かな。
 つい、年下の自分が保護者のような気持ちになってしまうのは、一緒
に過ごした二年半とたぶらせてしまうせいかも知れない。
 ふと、佐為と打った棋譜を並べていた手を止めて、ヒカルはふぅと息
をついた。
 その佐為に、すがりついてあんなこと、しちゃってるんだよな。
 佐為を見ているだけで、身体の奥に火が灯ることがある。ヒカルが隠
そうとしても、佐為にはすぐに分かってしまうらしく、思い出したよう
に逢瀬は続いていた。別に佐為と肌を合わせるのは嫌ではない、いや、
むしろ、触れたくて触れたくてたまらなかった相手と抱き合えることに、
幸せさえ感じる。ただ、その理由が分からないのが、不安なだけだ。
 そのとき、部屋の外から、若い女の声が聞こえて来た。
「光の君」
 えっ、えっ、光の君ってオレのこと?焦りながらも、ヒカルはそちら
に向かって返事を返す。
「誰?」
「女房の三条でございます。お飲物をお持ちしました」
「あっ、いいよ、入って」
「失礼致します」
 すっと襖が開き、まだ若い、たぶん、ヒカルと同い年くらいの女房が
入って来た。ヒカルは見たことのない顔だった。
「碁をされていらしたのですか?お邪魔をして申し訳ありません」
「ううん。ちょうど喉が渇いたところだったから」
 受け取った杯からは、ほんのりといい匂いがする。てっきりお茶か白
湯だと思っていたが、違ったらしい。



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