平安幻想異聞録-異聞-<駒競> 2


(2)

「うわっ!すごい!氷じゃん!」
予想通りのヒカルの反応に、佐為が目を細めた。この暑いさかりに氷菓子。並の貴族
では手に入らない高価な贅沢品だ。さらに駄目押しと、佐為が三つ目の皿の中の透明な
とろりとした液体をそれにかけた。
「何?」
興味津々にヒカルが訪ねる。
「甘葛の蜜ですよ」
「うぇっ!」
佐為の口からでた、これまた高級甘味の名に、ヒカルが変な声を上げて後づさった。
予想以上の反応に、してやったりと佐為が声をあげて笑う。ヒカルの驚く顔が見たくて、
そして喜ぶ顔が見たくてこれを出してきたのだ。
「どうしたんだよ、これ」
「先日、大納言藤原光明殿より請われて、指導碁をさせていただいたのですよ。
甲斐あって、長年の碁敵に勝つことが出来たとか。これはその礼として、光明殿より
届けられたのです」
「へー」
とりあえず、ヒカルはキラキラと陽光に光る氷の乗った皿を取り、目の高さまで
掲げ上げ、それを四方から眺めてみる。
「ははっ。顔近づけただけで、ひんやりするよ」

小さいが綺麗に手入れされた中庭を望む簀子に二人、肩を並べてちょこんと腰かけ、
珍しい甘味を楽しむ。
「甘いなぁ」
ヒカルがしみじみと口にする。
「でも、世の中にはもっと、甘くておいしいものもありますよ」
「そうなの?佐為、食ったことある?」
「もちろん」
そう言った佐為の手が、まだ氷の残る皿を下において、ヒカルの顎にかけられた。



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