平安幻想異聞録-異聞-<水恋鳥> 2


(2)
互いを初めて知ったあの頃に比べ、随分と大人びたと思う。腕も足もすんなりと
延び、特有の色気を醸し出していたあどけなさは消えて、かわりにその体躯は
少年らしいさわやかな艶やかさをたたえるようになっていた。ふっくらした頬の線も
徐々に肉が落ち、愛らしさより年相応の凛々しさの方が目立つようになってきては
いたが、それでも一旦、佐為の腕の中に抱き込まれてしまえば、ヒカルは前と
変わらず佐為の可愛らしい想い人だ。
「あ、今度は東のが鳴きだした」
ヒカルが東の方に顔を巡らせようとするのを、両手でそっと包むようにして
捕らえ、唇をよせた。
それを僅かに目を細めただけで、まぶたを閉じずにヒカルが受け止める。その様子を
眺めていた佐為も目を開けたまま唇を重ねた訳だが。少年の奥深くから何かを引きだす
ように、柔らかくその下唇を歯で挟んで噛んでやると、目の前の密に生えた睫毛が
細かく震えて、息を吐きながら、ヒカルが僅かに唇を開いた。そこに舌を滑り込ませれば、
待っていたようにヒカルの舌の尖端が触れる。お互いの瞳の色を眺めながら、
しばらくそうやって舌を軽くなじませあった後、ヒカルの方が佐為から身を引いた。
「したいのか……?」
言外に、『まだ日も高いのに』という困惑が混ざっているのが分かったが、
佐為は黙ってヒカルの腰に右手をまわし、左手でその狩衣の首の留め紐をほどいた。
ヒカルも何も言わず佐為の肩に顔をうずめ、その背に手を回す。
それが了解の合図だった。
ヒカルは腰に太刀の鞘を留めていた紐を自分でほどいた。
カタリと、太刀が床に落ちる冷たい音がする。
以前、ヒカルを救う手助けをしてくれたその太刀に佐為は手をやって、
今はそっと離れた所に押しやる。
ヒカルはそのままその手を佐為の着物の前身頃の襟元に添えて、留め紐を
ほどき、白い狩衣をぬがしにかかった。
佐為はすでにヒカルの狩衣をくつろげ、単衣の上から布越しに胸にある
小さな突起を転がし、こねるようにしている。
乳首を布のざらざらした感触で擦られるのが感じるのか、ヒカルは自分から
胸を佐為の手のひらに押し付けてきた。



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