誕生歌はジャイアン・リサイタルで(仮題) 2
(2)
と、突然あかりが慌てたように口を開いた。
「あっ…いっけない!ケーキのロウソク買うの忘れちゃった」
「ロウソク?そんなのは仏壇のロウソクで代用すればいいじゃろ」
「あ、そうですね!ヒカルのおじいちゃん、ナイスアイディアだわ!」
そう言って仏壇用ロウソクを立て始めるあかりと祖父。ヒカルは呆気にとられるばかり。
「じいちゃん…?あかり…?」
「ヒカルのおじいちゃん、それでもロウソクが足りないわ。ヒカルは今日で16歳なのに…」
「ふむ…じゃあ残りは線香で間に合わせておこう」
線香に火をつけて立て始める祖父。
「ひーっ!じーちゃん!何だか陰気なケーキなんだけどっ!!」
「そうだな…碁石も白と黒でお葬式みたいだし、不気味だな」
「じーちゃん、自分でやっといてそりゃないだろ!」
そこに何やら大きな包みを抱えて現れた祖母。ヒカルは何やら嫌な予感がしていた。
「ヒカルが夏に来た時に置いていった花火の残りがありましたよ、これで飾り付けすれば、華やかになるんじゃないかしら!?」
「わあっ!名案だわ!ね、ヒカル花火好きだったよね?そうしましょ!」
嬉々として提案する祖母と、嬉しそうに花火をケーキに立て始めるあかり。花火好きにも時と場合がある。
「ちょっ……!!!??」
点火
あぼーん
「ごめんねーヒカル…ケーキはまた作りなおすから…」
「……いいよ…もう。それよりオレ、もう行かなくちゃ。和谷達と約束があるんだ!」
ヒカルの長い1日は、はじまったばかりだった。
|