身代わり 2


(2)
ふてくされた気分のままヒカルは布団に入った。
佐為もなかなか逆立った心を鎮められずにいて、唇を引き結んで脇に座っていた。
相手が起きているのは分かっている。しかし二人とも長いあいだ身じろぎもしなかった。
そのまま沈黙が続くと思われたが、不意にヒカルが小さな吐息をこぼした。
ヒカルは覚えのある衝動に身体をごそごそとさせた。
(どうしよう、出したくなっちゃった……)
ジャージの上から熱を訴えてくる自身に触れた。いつもは気にせずにするのだが、なんだか
今はできない。そう思ってしまうのはもちろん、佐為のことがあるからだ。
我慢してさっさと寝ようと思うのだが、身体がそれを許してくれない。
切なくて泣きそうになってくる。
佐為はそんなヒカルの心情と、若い性の衝動に表情をやわらげた。
《ヒカル、こっちを向きなさい》
できるだけ優しく呼びかけたのに、佐為の声にヒカルは全身を硬くさせた。
「な、なんで、オレもう寝てん……」
《わかっているんですよ》
そう言われるとヒカルももう意地を張ってなどいられなかった。
起き上がると、ベッドに腰掛けた。そしてズボンを下着ごと自棄気味にずりさげた。
すでに勃起している未成熟な性器に、佐為は手を這わせた。するとそれはさらに上向いた。
ヒカルが佐為の手に自分の手を重ねてくる。そして一緒になってしごきだした。
「ふっ、ふぅ、んぅん……」
ヒカルの目には佐為の手が映っているため、まるでしてもらっているような錯覚がする。
薄闇でも、ヒカルの恍惚とした表情が佐為にはよく見えた。
こうしている時、佐為はいつも不思議な感覚に囚われる。
暑さも寒さも感じない、もうないはずの我が身。それなのに熱くなるのだ。
(もし今、私に肉体があったなら……)
そう考えて首を振る。なくて良かった。ヒカルを泣かすようなことはしたくない。
「んぁっ、さいぃ……っ」
佐為の手が集中していないことに気付いたヒカルが呼びかけると、すぐに応えてやる。
するとヒカルの膝がしらが、みっともないくらい震えだした。



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