少年サイダー、夏カシム 2
(2)
「・・・あ、和谷」
ヒカルはベッドから起き上がろうとしたが、顔を苦痛に歪ませるとベッドへ倒れこんだ。
ヒカルの母親によると、熱はもう下がり元気になってきたのだが、頭痛がひどいため、起きていることができないらしい。
「おい、無理するなよ」
和谷はそう言うと、ヒカルをベッドに寝かせ、布団を整えた。
ヒカルは痛みのせいか、息が荒かった。額には大粒の汗がにじみでていて、髪の毛がはりついている。
和谷は近くにあったタオルで額をぬぐってやる。その時に額や頬、首筋に触れてみたが、思ったよりも熱くはなかった。熱は確実に下がったのだろう。しかし汗をひどくかいている。
和谷はふと思い出し、持ってきたコンビニの袋からペットボトルを取り出した。
「のどかわいてないか? ほら、これ買ってきてやったぞ。進藤がこの前飲みたいって言ってた新発売の炭酸飲料」
ヒカルはそっと目を開けた。そこには夏の真っ青な青空と入道雲のイラストが描かれたラベルが貼られている透明な炭酸飲料があった。ヒカルは嬉しそうにわずかに微笑んだ。
「アリガト、和谷」
和谷はそれを見てハッとした。ヒカルの苦しみを抑えた笑顔、汗でしっとりとした前髪、濡れたつぶらな瞳、上気した頬、薄く開いた赤い唇、そしてそこからもれる熱い吐息。
病気のせいだとは分かっていても、和谷は出会った頃の元気でやんちゃな少年とは違う、艶かしいヒカルの姿に目どころか心も一瞬にして奪われてしまった。
「・・・和谷?」
突然自分を見つめて動かなくなった和谷を不思議に思い、ヒカルは少し小首をかしげた。
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