深淵 2
(2)
辺りの薄気味悪さに加え早く家に帰りたいという気持ちもあったため自然と
早足になる。やっと道の半分まで来たと思ったその時、闇の中からいきなり
伸びてきた手にヒカルは捕らえられた。
「!?」
ヒカルは反射的に声を上げようとした──が、口を塞がれたためくぐもった声にしかならない。
そのままヒカルは生い茂る草むらの中へと引きずり込まれていった。
闇は暴れるヒカルを押さえつけ、そのまま側にあった木に力任せにぶつけた。
背中を強打し一瞬ヒカルの息が止まる。
「ゲホッ、ゲホッ・・・!」酸素を求めて激しく咳き込むヒカルを闇は満足そうに見つめると
どこからかロープのような物を出し、瞬時に後ろ手に縛り上げた。
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