初めての体験 Aside 番外・ホワイトデー 2


(2)
 初心者のボクは、まずは簡単なチョコレートの作り方を、数冊の本を読み比べて研究した。
細かいところは、本によってまちまちで、その辺は適当にいいところだけを取った。正確に
分量を量り、慎重に材料を混ぜる。ボクは完璧主義者なので、寸分の狂いも許せないのだ。
 そして漸く第一号が完成した。
「これは“必ず進藤に食べて貰うぞチョコ第一号”と名付けよう……」
初めてにしてはまずまずの出来だった…………が、まだ、進藤にプレゼントしても良い域には
達していない。ボクは、すぐに第二号の制作に取りかかった。
 試行錯誤を繰り返し、十号まで作ったとき、やっとそれは完成した。色、形、ツヤ、舌触り、
そして何より一番大切な味………どれをとっても申し分のない出来だ。これなら進藤も
満足するだろう。自信がある。
 きれいにラッピングをして、紙袋にいれた。ボク自身はもうチョコレートは、見たくない気分だった。
大量の試作品が冷蔵庫に収められているが、これは後日、芦原さんか緒方さんにでも、
食べて貰うことにした。
 研究会の日、ボクは二人に、その辺にあったタッパーに、適当に放り込んだチョコレートを
渡した。
 芦原さんは困惑しつつも、礼を言って受け取った。芦原さんはボクには逆らえない……
…逆らわない方がいいことをちゃんと知っている。
 だが、緒方さんは滅茶苦茶嫌がった。それはもう、日頃のクールさはどこへやら……
見栄も世間体もかなぐり捨てた激しい抵抗だった。どうやら、彼は、ボクの本性に薄々
感づいているらしい。ボクが生まれる前から、家に出入りしていただけのことはある。
 し・か・し!緒方さんには、まだ、何もしていないのだ!!チャンスを窺っては、いるのだが、
彼はなかなか隙を見せない。ムカつくので、次は本当に毒でも入れてやろうかと思っている。
 結局、チョコレートは全部芦原さんが持って帰った。全部食べたかどうか、今度、聞いて
みよう。



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