月明星稀 2
(2)
「なあ…賀茂……聞いてもいいか…?」
「なに?」
けれど言いかけはしたものの、なんと尋ねてよいかわからず、ヒカルは口篭もった。
「あの…さ、」
「どうしたんだ?君らしくも無い。」
触れるべきではない事なのかもしれない。
自分には触れられたくない事なのかもしれない。
けれど言い出してしまった事をそのままうやむやにする事ができなくて、ヒカルはぼそぼそと言い辛そう
に言った。
「…俺、ここが居心地がいいからって、しょっちゅう入り浸ってていいのかなって。」
「何故そんな事を言うんだ?僕は君が来てくれて嬉しいのに。
今日のような月だって、一人で見るよりは二人で見る方が更に美しく見える。そういうものじゃないか?」
「おまえ、さ、誰か想う人がいるって、言ってたよな。あれ、どうなった?」
一瞬、虚をつかれたように、アキラが小さく目を見開いた。
それから視線を落とし、何事もないかのように、平静を保った声で答えた。
「…どうなったって、何が。」
「なんにも、してないの?文を送るとか、逢いに行くとか、何か、してないの?」
「何を、突然…」
微かに震える声に、ヒカルは言うんじゃなかった、と、後悔した。けれど口に乗せてしまった言葉は取り
消せなくて、必死になって言葉を探した。
「俺が邪魔してんじゃないかって、それで、俺…」
言われてアキラは少し途惑ったような顔をしてヒカルを見た。
「そりゃあ、おまえもちょっと誤解されやすい奴かもしれないけど、本当におまえを知ったら、好きになら
ない奴なんて、いないと思う。それなのに、」
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