夜風にのせて 〜惜別〜 2
(2) 二 明け方、電車が動き始める頃にひかるは自宅へと帰る。 素のひかるは、今までステージでたくさんの光と拍手を浴びていたとは思えないほど幼く 見えた。ステージ用の厚化粧と派手な衣装を脱ぎ捨て、シンプルなアイボリーのセーター とチェックのロングスカート、そして手編みの赤いマフラーを巻くとまだ学生のようだっ た。 ひかるは小走りに朝の新宿の街を駆け抜けた。 その顔はこぼれんばかりの笑顔でいっぱいだった。