トーヤアキラの一日 2 - 3


(2)
それはアキラにとっては他に替えようも無い至悦の時間なのである。生涯の
ライバルであるヒカルと碁を打つのは、他の誰と打つ時よりも気持ちが高揚するし、
勉強にもなる。しかも最近では布団に入る前に、必ず10秒早碁を打って、勝った方が
夜の主導権を握る事が出来る、というゲームを始めたのである。
今日は2週間振りにヒカルが泊まりに来る事になっている。今日も何が何でも
10秒早碁に勝たなくてはいけない。そのためにちゃんと準備もしているのだ。
勝ったその先の事を考えると、どうしても顔が緩んでしまうアキラだった。

古い家ではあるが、母の明子は新しい物好きなので、風呂もちゃんと最新式の
設備が備わっている。トイレも洋式のウォシュレット付きだし、台所も最新の
システムキッチンになっていて、ビルトインタイプのディッシュウォッシャーも
付いているくらいだ。前は良く、弟子たちが集まって食事をしたり、泊まって
行ったりしたので、不便が無いようにしてあるのだった。

鼻歌でも歌いたい気分でアキラはシャワーを浴びる。バスタオルを巻いた姿で
ドライヤーで髪を乾かして、浴室をチェックする。
「よし」
そう言って自室に戻ると、下着とシャツ、靴下、ズボンを身に付ける。昼には出か
けなければいけないので、それを考えてネクタイを選んで上着と共にハンガーにかけ
ておく。
時計を見ると、8時少し前を指していた。


(3)
まだ敷かれたままの布団を押入れに片付けようとして、掛け布団を畳む。枕をどかして
敷布団に手をかける。そこでアキラは、両親が中国に出発してからの6日間、シーツを
交換していなった事に気がついた。今日はヒカルが泊まりに来るのだから、新しいシーツに
交換しなければ、と思って、ふっと前回ヒカルが泊まりに来た時の事を思い出した。

布団の中に潜ったヒカルがシーツに鼻を擦り付けていたかと思うと
「なんだよぉ!このシーツ!」
と叫んだ。
何か不備でもあったのかと驚いてヒカルを見つめるアキラに
「ノリの臭いしかしないじゃん。ん〜もう、せっかくお前の匂いがすると思って楽しみに
してたのにさー」
と言って口を尖らせる。
思いがけないヒカルの言葉に、アキラは顔が赤くなるのがわかった。
「キミが来るからシーツを換えたのに・・・・」
「それが余計な事なんだよ!! この間は思いっきりお前の臭いがして嬉しかったのにな〜」
「えッ?・・・・そう言えば前回はシーツ換えるの忘れてたかもしれない。突然泊まりに来る
事になったし・・・」
「だろ!・・・あのさ、今度からオレが来るって分かったら、シーツ交換すんの無しな!」
「・・・・分かった。キミがその方が良いなら、そうするよ。」



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