祭の後・又はプチの恩返し 2 - 3
(2)
そんなパパを物陰からそっと覗く男達がいた。
プチ魔境に住む、今は祭の熱も醒めきらない、だが普段は小羊のように温厚で大人しい
プチ住人達であった。
「やっぱさ、ここは一つ、パパにお礼を言わなきゃいけねえよな。」
「あんな良い意味で期待を裏切るハァハァ小説、賑やかな祭、流石はパパだよ。」
「お礼って言ったって、パパの喜ぶものと言えばヒカルたん以外にはねえだろ?
そうか、オレ、帰ってヒカルたんAAの新作にチャレンジしてみるよ!」
住人の一人が新作を練るべくAAアトリエに走って帰って行った。
「いいよな、手に職のあるやつは…オレなんかパパにお礼したくたって何も出来ないよ…」
そんな泣き言を言い出した住人の肩をガッシリと掴む手があった。
「大丈夫だ」
それはそんなプチ住人達を見ていた魔境からの出張者であった。
「こんな時のために用意したものがある。」
見なくてもそれが何であるかは、プチ住人も既にわかっていた。
いや、最初から誰もがそれはわかっていた事だったのだが…
その意味する事の恐ろしさに皆、口を噤んでいたのである。
こんな所がプチ住人は小心者と言われる所以かもしれない。
勇気のあるもの一人がそれを恐る恐る取り上げた。
「問題は…このヒカルたんマスクを誰が被るかだ。」
ヒカルたんマスクを装着してヒカルスレに乗り込み、魔境に祭を提供する。
それが一番の恩返しであると、わかってはいた事だったのに。
(3)
「486、おまえ行けよ、パパ最高って言ってたじゃねえか。」
「それはおまえも同じだろ、>487」
「それを言うなら祭に浮かれてうっかりageた465が最適じゃねぇか」
醜い押し付け合いである。
何しろヒカルタンハァハァの激しい魔境住人達の事、ヒカルたんになってスレに行って
しまったらどんなことになるやら…ドーナツやチョコパイ一つ、カステラのかけらでも
祭を開催できるような陽気な住人達なのだ。
いくらSMっ気のあるプチ住人達と言えど(いや、だからこそ?)、容易に想像できる
祭の様子に恐怖を禁じ得なかった。
一体誰がヒカルたんを演じるのか。住人達は牽制しあいながらお互いを見やった。
その淀んだ空気を打ち破るように、愛らしい声が響いた。
「みんなだめだなあ!パパへのかんしゃのきもちがたりないの?
そんなおくびょうものはボクはすきじゃないなあ…
おとこのこなら、こわくてもにげちゃいけないんだ!
たちむかっていかなくっちゃ!ねえ、おがたくん?」
「ハハハ、アキラくんは強い子だねえ。さすがはみんなのアイドルだよ。ナデナデ
大丈夫だよ、ここにいるのはそんな臆病者ばかりじゃない。
アキラくんの為ならなんだってできる勇者達ばかりだ。
そうだろう?」
突如現われたアイドル達に住人達の空気は一変し、一気にハァハァで一杯になった。
「ち、チチャーイアキラたん…ハァハァ」「兄貴…ハァハァハァハァ」
「つ、ついにちっちゃいアキラたんに会える日が来るなんて…オレ、もう死んでもいい…!」
「兄貴…、兄貴の言う事だったら、オレ、何だってするぜ…靴だって舐めます…」
|