pocket-sized Xmas 2 - 3
(2)
普通サイズのアキラたんに寝込みを突撃されてどぎまぎしつつ、
俺は正座して居住まいを正した。
その間にも見慣れたあの子のちさーい姿を探して、布団の陰や床の上に目を走らせながら。
(ポケットサイズのアキラたんは、トイレにでも行ってるのかな?)
「えーと・・・あれっ?えっと、アキラたん、君は・・・」
「ええ。実は・・・」
毛布の前がすすっと開いて、奥にあるお宝がチラリズムする。
おおおっ!と感動する俺の前に、スラリとした白い脚が伸ばされた。
完璧な美脚。この脚の持ち主がいつも正座しているなんて誰が信じるだろう。
その足先を包んでいるのは――見慣れた紺色の冬用靴下。
アキラたんには少し大きいのか、爪先の部分がだぶついている。
「・・・あれ?それ、俺の靴下・・・?」
「ハイ。あなたは昨夜、靴下を片方枕元に置いてお休みになりましたよね?
それで、あなたがいつも小さいサイズのボクと暮らすとか妄想ばかりしていて
気の毒だから、今年はボクをあなたのプレゼントにあげましょうってサンタさんが。
でも、靴下にボクの体はとても入らないので、片足だけ履かせてもらったんですけど・・・」
またもお宝をチラリズムさせながら、恥ずかしそうにアキラたんが見せた
もう片方の足は確かに裸足だ。
サンタクロースから俺へのプレゼント・・・
もしかしてアキラ号だろうか?俺がついに重度おかっぱ病認定されて、
クリスマスプレゼントにかこつけてアキラ号が派遣されたのか?
――それでもいい!!嬉しい!
だが今アキラたんはなんて言った?
『小さいサイズのボクと暮らすとか妄想ばかりしていて』
って、ポケットサイズのアキラたんはどこへ行った?
俺の、俺のちさーいアキラたんは!!
(3)
「・・・どうかしたんですか?」
急に布団や家具を引っ繰り返して必死でちさーいアキラたんを探し始めた俺に、
普通サイズの綺麗なアキラたんが首を傾げた。
見る者を惹きつけずにはおかない魅力的なネコ目。普通に喋ってるだけで色っぽい声。
毛布の影から、片っぽ靴下の美脚が俺を誘っている。
さっき少しだけ見えたお宝がクリスマスのイルミネーションみたいに頭をチラつく。
だが今はハァハァしてられる場合じゃなかった。
「ごめんよアキラたん、ちょっと待っててくれるかな。今お茶でも出すから・・・
でもその前に、あれ?あれっ?アキラたん、どこ行ったんだい出ておいで!
アキラた〜〜〜〜〜〜ん!!!」
布団の裏を覗いてティッシュ箱の中も確かめて、鞄の中も机の中も、
果てはゴミ箱の中まで探したがアキラたんはどこにもいない。
そんな。
ちさーいアキラたんとの生活が全部俺の妄想だったなんて、そんな・・・!
無意識に俺はパジャマの胸ポケットに手を当てていた。
いつもあの子はここに入ってて、俺の心臓の上で笑ったり拗ねたり泣いたりして、
その小さな温もりを、俺は今だってこんなにはっきり思い出すことが出来るのに。
心臓がバクバクして、体中の血が熱いんだか冷たいんだか分からないようになった。
それからとてつもない喪失感が静かに胸に迫ってきて、
じわじわと涙腺が緩んできた俺に普通サイズのアキラたんが優しく寄り添った。
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