性の目覚め・12才ヒカル 2 - 3
(2)
相変わらずニヤついたその表情の気味の悪さに確信めいたものを感じたその時。
「ヒカル、帰ろう」
幼馴染のあかりが声をかけてきた。ヒカルが蔵で倒れた日から、彼女なりに心配
しているのか、一緒に帰ろうと言ってくることが多くなっていた。
「ん、ちょっと待ってて、今行く。……んじゃ、そういうことで」
チャンスとばかりに友人に向き直り、簡単な挨拶だけをして背を向ける。
…と、後ろからランドセルをがっしと掴まれてしまった。
身動きがとれずにじたばたしている内にふたが開けられ、ゴトリ、とランドセル
の中に何かを入れられた音がした。
「何?何入れたんだよ?」
「へっへっへ。内緒」
「えー!?何だよそれー!」
ランドセルを下ろして中を見ようとすると、腕を抑えて止められてしまった。
「家に帰ってからのお楽しみ!」
「ヒカルーッ!」
なおも文句を言おうとしたところに、あかりの催促が入る。
ヒカルがあかりに気をとられた隙を見て、彼はヒカルのランドセルを力を込めて
一発叩き、さっさと逃げていってしまった。
「家に帰ってから見るんだぞー!」
「何なんだよ、もー!!」
(3)
帰り道での当たり障りの無い会話のお陰で、ヒカルは家に帰り着く頃にはすっかり
さっきのことを忘れてしまっていた。
そしてそのことを思い出したのは就寝直前、明日の時間割を揃えている時だった。
「何だこれ?」
見慣れないもの。本屋の茶色い紙袋に入っている――感触からするに、どうやら
雑誌か何かのようだ。
――あ、ヒカル、それってもしかしてさっきの…?
「…あっ!『家に帰ってから見ろ』とかいってたやつか!すっかり忘れてたぜ」
逆さまにして一回振ると雑誌状のものがバサリと床に落ち、中の1ページを開いて
落ち着いた。
「…………!!?」
それを佐為と二人で覗き込み、その格好のまま固まってしまった。
いち早く自分を取り戻したのは佐為だった。ヒカルの視界をさえぎるように腕を
振り回して喚く。
「ヒカルっ!見ちゃ駄目ですーっ!駄目ですからね!!」
そんな佐為の慌てぶりに気が付いているのかいないのか、ヒカルはぼそりと呟いた。
「……すげー…。オレ、エロ本って初めて見た……」
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