身代わり 2 - 3


(2)
ふてくされた気分のままヒカルは布団に入った。
佐為もなかなか逆立った心を鎮められずにいて、唇を引き結んで脇に座っていた。
相手が起きているのは分かっている。しかし二人とも長いあいだ身じろぎもしなかった。
そのまま沈黙が続くと思われたが、不意にヒカルが小さな吐息をこぼした。
ヒカルは覚えのある衝動に身体をごそごそとさせた。
(どうしよう、出したくなっちゃった……)
ジャージの上から熱を訴えてくる自身に触れた。いつもは気にせずにするのだが、なんだか
今はできない。そう思ってしまうのはもちろん、佐為のことがあるからだ。
我慢してさっさと寝ようと思うのだが、身体がそれを許してくれない。
切なくて泣きそうになってくる。
佐為はそんなヒカルの心情と、若い性の衝動に表情をやわらげた。
《ヒカル、こっちを向きなさい》
できるだけ優しく呼びかけたのに、佐為の声にヒカルは全身を硬くさせた。
「な、なんで、オレもう寝てん……」
《わかっているんですよ》
そう言われるとヒカルももう意地を張ってなどいられなかった。
起き上がると、ベッドに腰掛けた。そしてズボンを下着ごと自棄気味にずりさげた。
すでに勃起している未成熟な性器に、佐為は手を這わせた。するとそれはさらに上向いた。
ヒカルが佐為の手に自分の手を重ねてくる。そして一緒になってしごきだした。
「ふっ、ふぅ、んぅん……」
ヒカルの目には佐為の手が映っているため、まるでしてもらっているような錯覚がする。
薄闇でも、ヒカルの恍惚とした表情が佐為にはよく見えた。
こうしている時、佐為はいつも不思議な感覚に囚われる。
暑さも寒さも感じない、もうないはずの我が身。それなのに熱くなるのだ。
(もし今、私に肉体があったなら……)
そう考えて首を振る。なくて良かった。ヒカルを泣かすようなことはしたくない。
「んぁっ、さいぃ……っ」
佐為の手が集中していないことに気付いたヒカルが呼びかけると、すぐに応えてやる。
するとヒカルの膝がしらが、みっともないくらい震えだした。


(3)
《ほらヒカル、先端のここを指の腹で押さえてごらんなさい》
すでに精液を流し始めているそこを、ヒカルは言われたとおりに愛撫する。
「くふぁ……っ」
快感がヒカルの身体につぎつぎと襲ってくる。
《私の動きに合わせて……》
佐為の濡れた声が頭のなかで響いた。
ヒカルは目をつぶりそうになるのをこらえて、佐為の手の動きを必死になって追った。
ひっきりなしに掠れた声が口から漏れる。ヒカルは変声期を迎えており、昔に比べてかなり
低くなっている。だが艶めかしさはいっそう増したように佐為は思えた。
ヒカルは将来、まぶしいくらいの若者になると佐為は確信している。
そしてそのヒカルの一番近くにいるのは、他ならぬ自分だ。
《ヒカル、手を……》
シャツを上げるよう示唆する。ヒカルがまくりあげると、とがった乳首が見えた。
きれいな薄桃色をしたそれを佐為は咥えた。
舌でそっと舐め上げる。ヒカルの味を感じることができないのがたまらなく残念だった。
ヒカルに見せ付けるように、佐為は何度もそこを己の舌と唇でねぶった。
「や、ぁぁっ、オレ……さ、いっ……もっ」
視覚だけでも刺激的で、性に関してまだまだ幼いヒカルはさらに煽られた。
手のなかのペニスはもうじゅうぶん膨らみきっていた。佐為はそれを解放すべく、軽い音をたてて、くちづけた。ヒカルにとって触感など問題ではなかった。
「ぉ……うん、くっぅ、んん!」
ヒカルは吐精した。指の隙間から精液があふれ、床にこぼれおちた。
薄い陰毛だけでなく、その奥の秘門までが濡れてしっとりとしている。
だがそれらをぬぐう気力もなく、ヒカルはベッドに倒れこんだ。
せわしなく息をついていると、佐為がおおいかぶさってきた。その重みは感じられない。
それが少し淋しかった。



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