ルームサービス DON’T DISTURB 2 - 3
(2)
「メシ」
端的にヒカルは言った。
「じゃあ、ルームサービス頼もうか」
「ルームサービスはイヤだ!」
ヒカルは間髪いれずに、言ったがが視線はアキラの方を向かない。
しばらくの沈黙ののち、ぜかな慎重なアキラの声が聞こえる。
「………でも、歩ける?」
ヒカルは襲ってきた筋肉痛をだましだましおきあがると、そろそろと
足を動かし、たちあがろうとした。が、ほとんどベッドから転げるよう
にして倒れた。腰に全く力が入らない。
「し、進藤」
あわててアキラがヒカルの体を起こそうとする。しかしヒカルはその
手を振り払って、這った。
「進藤・・・」
「トイレいきてえんだよ」
床をにじる。にじっても筋肉痛があるのは変わらない、ほんの少しの
はずのトイレが遠く思えた。が、突然、胴体に手を回されたかと思うと、
ひっくりかえされ、体が床から浮いた。
「・・・」
(3)
「・・・」
肩の下と、膝の下に入ったアキラの手がヒカルを抱き上げている。
まるで、救助される女のように。軽々とかかえあげられてしまった。
無言でアキラはヒカルをトイレまで運ぶと便器のフタをあげて座ら
せ、ドアを閉めた。
しばらくすると再びドアをたたく。
「終わった?」
「うん・・・」
するとアキラはドアを開き、便器の上に座っていたヒカルの肩と足
の下に手を入れる。
持ち上げられる。
ヒカルはベッドまで素直に運ばれることにした。おろした後、ヒカルと
アキラの目が会う。
「・・・・・・」
アキラは目を逸らし、ヒカルから離れた。
「車椅子が借りられるかどうか聞いてくる」
ぽつんと座ったベッドの上で、ドアがバタンと閉まる音を聞いた。
車椅子・・・。
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