誕生歌はジャイアン・リサイタルで(仮題) 2 - 4


(2)
と、突然あかりが慌てたように口を開いた。
「あっ…いっけない!ケーキのロウソク買うの忘れちゃった」
「ロウソク?そんなのは仏壇のロウソクで代用すればいいじゃろ」
「あ、そうですね!ヒカルのおじいちゃん、ナイスアイディアだわ!」
そう言って仏壇用ロウソクを立て始めるあかりと祖父。ヒカルは呆気にとられるばかり。
「じいちゃん…?あかり…?」

「ヒカルのおじいちゃん、それでもロウソクが足りないわ。ヒカルは今日で16歳なのに…」
「ふむ…じゃあ残りは線香で間に合わせておこう」
線香に火をつけて立て始める祖父。

「ひーっ!じーちゃん!何だか陰気なケーキなんだけどっ!!」
「そうだな…碁石も白と黒でお葬式みたいだし、不気味だな」
「じーちゃん、自分でやっといてそりゃないだろ!」
そこに何やら大きな包みを抱えて現れた祖母。ヒカルは何やら嫌な予感がしていた。
「ヒカルが夏に来た時に置いていった花火の残りがありましたよ、これで飾り付けすれば、華やかになるんじゃないかしら!?」
「わあっ!名案だわ!ね、ヒカル花火好きだったよね?そうしましょ!」
嬉々として提案する祖母と、嬉しそうに花火をケーキに立て始めるあかり。花火好きにも時と場合がある。
「ちょっ……!!!??」
点火


あぼーん


「ごめんねーヒカル…ケーキはまた作りなおすから…」
「……いいよ…もう。それよりオレ、もう行かなくちゃ。和谷達と約束があるんだ!」
ヒカルの長い1日は、はじまったばかりだった。


(3)
ヒカルは大慌てで走った。和谷と駅前で待ち合わせをしていたが、もう10分ほど遅れていた。
「進藤!おせーぞ!何分待たせる気だよー」
「ご、ごめんー…ちょっといろいろあってさ」
息を整えながら謝るヒカルに、和谷は「しょーがねーな」と笑って許してくれた。
まさか祖父母とあかりのバカ騒ぎで遅れたとは言えなかった。
「あれ?伊角さんは…一緒の約束だったよね」
「ああ、伊角さんは後から来るんだ。それより行こうぜ!。」
歩き出した和谷を慌てて追いかけながら、ヒカルは「どこに行くんだよ?」と尋ねる。
「今日はお前の誕生日だろ?マック位なら奢ってやるぜ」
和谷の申し出に、ヒカルは笑って頷いた。


(4)
和谷はマクドナルドになにやらペットボトルを持ち込んでいた。
ヒカルに「和谷、それなんなんだ?」と聞かれた途端、和谷は
ペットボトルの蓋を開け、中の液体をマクドナルドの客席にまき散らし始めた。

「おまえらみんな死ぬんだよ!何が誕生日だ!アーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」
「やめろ!和谷!」「キャア!なんてことをするのよ!」

ヒカルや周りの客が止めるのも気にしないでその液体にライターの火を
近づける和谷…。
その時、自動ドアを大きな音をたてて抉じ開け、現れた人物がいた。
消防士姿の新初段、伊角さんだった。
「和谷、そこまでだ」


(続く)

ヒカル 「続くのかよっ!!!!!???」



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