ルームサービス 2 - 4


(2)
「な・・に」
だが、すばやく立ち上がった黒髪の少年が、生き物が質問を発する前に唇を閉じてしまった。
「んっ」
少年の舌が生き物のかわいらしい唇を割って入り、生き物の頬の色がさらに濃くなり、閉じられた睫が震える。
「んっん」
俺はギクシャクしながら、部屋を出た。や・・、と生き物の声が聞こえる。首筋がちりちりとして死にそうだった。
生き物の唇をむさぼっている少年が、ぎろりと俺を睨んでくる。ああ、そうだ。こういう場合でも何も見なかったように部屋を去るのが
俺の仕事だ。
だが・・。
前が膨らんでしまっている。なんてことだ。たかだキスシーン。裸を見せられたわけでもないのに。たったそれだけで。
「失礼します」


(3)
しかし、テントを張った前をどうにかしなければどこにもいけない。
ちくしょう・・・。手ぢかなトイレに向かおうとして、ふと気が付いた。
サインもらってないじゃないか。
振り返ろうとしたとき、部屋の扉があいて、おかっぱが出てくる。
俺は少しがっかりした。もう一度、あの生き物の姿が拝めると思ったのに。
「サイン、忘れてますよ」
でサインをしながら、俺の股間に、ふと視線を落とした。
おかっぱの唇に笑みが浮かぶ。
・・・ああ笑え、たっちまってるよ。ちくしょう、・・・
「今日の勤務はいつあがるんですか?」
「へ?」
「じゃあ、あがった後に部屋に来ます?」
「へっ?」
驚いたておかっぱを見る。それって。
 「進藤は見られてる方が好きなんだ」
 急にオカッパの口調が変わった。
「キミも見たいんだろ、進藤を、じゃあこいよ」
俺は信じられない思いでオカッパを見詰めつづけた。


(4)
その後のオレの任務は散々だった。頭の中をあの小さなぷっくりとした唇が、潤んだ大きな瞳がちらつく。
本当に信じられない。
あの機械音。ヴァイヴの音だった。何度かきいてるから間違いない。あの可憐な生き物の下のお口には間違いなくあの瞬間にヴァイヴがつっこまれて振動していたのだ。
「・・・・くっ」
たちそうになる、自分をこらえる。
勤務が終わるまでがとてつもなく長い時間に感じられた。

「もうすぐ彼が来るよ」
進藤にささやきかける。だが、進藤には聞こえているのかいないのか。ただ、弱弱しく首をふるばかりだ。
ムリもない。ぶっつづけに何時間もヴァイヴであえがされてちっとも休んでいない。しかも一度も達していない。前はかわいらしくたちあがったままずっとなので相当体力的にきついだろう。
「お・・・わらせて、とう・・・や・・・で。・・・・いき・・・たい」
塔矢の肩にアタマをすりつけながら、甘えるように懇願してくる。
「だめだね。何でもするっていったじゃないか。キミ。それにもうすぐあいつが来る時間だ」
進藤の瞳が見開かれ、唇が噛み締められた。
「本・・・気・・・塔・・・ぁああああ」
突然ヴァイヴを引き抜いたので、進藤は大きく体をのけぞらせて、ひきつった声をあげた。
その後、衝撃を耐えるよういしたを向いてあえいでいる進藤のワキとひざの下に手を入れ、もちあげた。
「何・・・・するの」
不安そうな瞳が聞いてくる。
「お迎えの準備、彼が来る前にね」

長い長い勤務が終わりようやく俺はその部屋の扉をあけた。
目に飛び込んできたものは・・・・。
机の上に、大の字に広げられた、一糸纏わぬ手足。
いや、正確には一糸もまとってなかったわけではない。その上にはさきほど。ルームサービスで持ってきた。サンドウィッチが乗せられていたのだから。



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