Eternal Promise 2 - 5


(2)


ぱちっ。そこで目が覚めた。
額から、汗がひとすじ流れ落ちる。
ボクはしばらくの間、硬直した体制で、天井を食い入るように、凝視していた。
――見てはならないものをみてしまった。
もしあの夢が、もう少し、長く続いていたら、ボクは進藤に向かって、こう呼びかけていただろう。

『……倉田さん…?』

何で、あんな夢を見てしまったんだろう。
10年…といえば、ボク達は30前。中年太り、というには、まだ早過ぎないか?
 
――しばらくして、夢の余韻が消え、ようやく気持ちが落ち着くと、ふいに耳につく小さな寝息。
隣りを見ると、すうすうと穏やかな呼吸で眠っている進藤がいる。
子供の頃に比べると、シャープになった顎のライン。
顔は大人びて、体つきも、成人男性に近づいてきている。
身長はボクより2センチ高いだけなのに、体重は進藤のほうが、数キロ重い。


(3)


『塔矢、もっと肉たくさん食べろよ』
 先日、二人で焼肉屋に行って、野菜ばかり焼いて食べるボクに、進藤が注意した。
『…ボクはあまり肉は好きじゃないんだ。キミこそ、肉ばかり食べすぎだ。ちゃんと野菜も取らないと』
『いーの。だって、ここ焼肉屋だもん』
――どういう理屈だ。
眉をひそめるボクの向かいの席で、進藤は肉を食べ続けた。
いくら若いからとはいえ、2.5人前くらいは食べていた。
普段だって、そうだ。彼はボクの倍の量は食べる。今日だって。
『オマエが小食すぎんの。ほら、こんなに腕だって細いし……』
そう言って、ボクの腕を掴んだ進藤は、そのままボクをベッドに押し倒した。
『…進藤!』
『こんなに細い身体じゃ、オレ以外にも簡単に押し倒されちまうぞ? 気をつけないとな』
笑いながら、キスをしてきて。
その後は進藤のいいようにされて……まぁ、ボクも気持ちよくしてもらったから文句は言わないけど。


(4)


ボクはゆっくりと上体を起こした。
ひんやりとした空気が、素肌に心地いい。
進藤の上にかかっているのは、毛布一枚だけだ。
何となく気になって、ボクは起きあがった。
進藤はまだ眠っている。
彼の上にかかっている毛布をそっとめくった。
夏に和谷くんたちと海に行って焼けたという肌は、薄い小麦色をしている。
ボクは仕事で行けなかった。一応、進藤は誘ってくれたけれど……。
毛布を進藤の腰の辺りまで下ろすと、現れた上半身。
ボクよりも、しっかりした肩幅。胸板も厚くて――男を感じさせる。
そういえば彼の裸をこうして、まじまじと見るのは初めてかもしれない。
ふと、お腹を見ると、少し、少しだけだが、ポッコリとふくれている。
「………」
そういえば、夕飯も、かなりの量を食べていたっけ。
――さっきの悪夢を思い出す。本当に、そのうち現実になるかもしれない。
ボクは眉をしかめると、進藤のお腹に手をのせた。


(5)


これがあんなに大きくなるんだろうか。妊娠何ヶ月だ、アレは。
…まさか、ボクの子供…? いや、いつも注ぎ込まれているのはボクの方だ。
身篭るとしたら、ボクだろう。というか、それ以前にボク達は男同士だ。ありえない。
大体、あんな巨体で、上にのられたら。つぶれる。つぶされる。
今でも、重いと思うのに、あんなのにのられてみろ。骨の一本や二本くらい…。
そういえば進藤のお父さんには会ったことがない。遺伝はありうる。
お母さんも、そんなに痩せていらっしゃるわけではないようだし。
だんだんと怖い考えになり、青ざめていると、
「…塔矢、なにしてんの…?」
ふいに、声が降ってきた。目を覚ましたらしい。
進藤は首だけ起こして、ボクを見ていた。
「あっ、すまない」
慌てて、手を離すと、進藤は「うーん」と伸びをして、えいっと起き上がった。
そして、にやりと笑って、
「なにやってたの? もしかしてオレの寝込みを襲おうとしてた?」
彼らしい軽口を叩く。
ボクは 「キミじゃあるまいし」 ボクの髪に触れてこようとした進藤の手を払いのけた。



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