S・W・A・N 2 - 8
(2)
迷ったけど出します。何やってんだろ俺・・・。Part47>273のつづき
※せいじ運子話につき、嫌なヤシはスルー頼んます
幼い頃から見守り導いてきた弟弟子のアキラに排便姿を見られる・・・
いや「見ていただく」ということは、
せいじにとってそれまで築き上げてきた自己を全て壊すことにも等しかった。
だがそんな屈辱的なはずの状況に、限りない安らぎを覚える自分がいるのもまた事実だった。
蔑むようなアキラの強い瞳に見られながら排便しることは
小さな子供の昔に返って母親の前で運子をしるような、郷愁にも似た感覚をせいじにもたらした。
突き上げるような強い便意の波が襲い「せいじもう駄目かもしれない」と思った瞬間、
アキラが振り向いた。
顔を真っ赤にして下半身にプルプルと力を込めるせいじを見てアキラはハァ・・・と
聞こえよがしに溜め息をついた。
そのまま小さく首を傾げると、漆黒の黒髪が窓からの光を受けてサラリと輝く。
「出したいの?」
眼鏡がズレるほどコクコクと強く頷く。
二人きりのこの空間にいる時、アキラはせいじに対して普段の敬語を使わない。
「ふぅん。可哀相だね」
そっけなく視線を本の上に戻し、白魚のような手でページをめくり出したアキラにがっかりする。
一旦解放の期待を持たされたせいか下半身の衝動は激しさを増し、
このままではあと1分も耐えられそうにない。
(3)
「あ、あ、あ、アキラ君・・・っ!」
下半身にありったけの力を込め声を上擦らせながらせいじはアキラの名を呼んだ。
「うん?」
本の上に視線を落としたままの、気のない返事が返ってくる。
その冷たいうつくしい横顔に自分の窮状が伝わるように、せいじは力一杯訴えた。
「あ、アキラ君っ!せいじもう我慢できないよう」
アキラは本をパタンと閉じて傍らのマガジンラックに放り込み、
回転式の椅子をゆっくりと回してせいじのほうを向いた。
スラリと伸びた美しい脚が膝の所で組まれて、ぶらぶらとせいじの気持ちを弄ぶように揺れる。
あでやかな赤い唇を軽侮の形に歪めてアキラは言った。
「何が我慢できないの?ちゃんと言葉にして言ってごらんよ」
「せ、せいじ運子がしたくて我慢できない。運子がしたいよう」
羞恥を感じる心などとうに失くしていた。
ただ自分の下腹部を突き上げるこの悪魔のような衝動を外に出して苦しみから解放されたい。
それだけだった。
(4)
「そう。本当は臭いが籠もるからベランダでして欲しいんだけど、
今日は寒いから外に出てもらうのは可哀相だね。
じゃあ、してもいいよ、ここで。ただし、白鳥さんからこぼれないようにお願いするよ」
「本当に?後で怒らない?」
「したいの、したくないの?キミがくどいと、見ていてあげないよ」
「する!せいじする。アキラ君、ちゃんと見ててね」
せいじの顔が、我慢のためだけではなく上気してバラ色に染まった。
たくさん我慢して良い運子を出した時は、アキラはいつも心底嫌そうな顔をして
せいじの頬をピシャリと叩く。
秀麗な顔に浮かぶ嫌悪の表情と白魚の手によって与えられる痛みとが
せいじにとっては最高のご褒美なのだった。
今日は我慢してだいぶ経つから、きっとたくさん出る。
それを見てアキラはどんな嫌な顔をするだろう。
どんなに無慈悲にせいじのほっぺたを引っぱたいてくれるだろう。
嗜虐にも自虐にも似た期待感に唇を震わせながら、
せいじは白鳥さんの長い首の横についている取っ手にしがみついた。
アキラの苦々しい視線を感じながら、満面の笑みでせいじは肛門を引き締める力を抜いた。
だがどうしたことだろう。
あれほど待ち望んだ解放の瞬間だというのに、力を抜いても何も起こらない。
そんな馬鹿な、焦って息んでも自分のお尻と白鳥さんの間にある冷ややかな空気を感じるだけだ。
アキラが舌打ちして立ち上がる。
そのままスタスタと、無情な美しい足取りで部屋から出て行ってしまう。
あっ、待って!アキラ君、これは何かの間違いだから、
今から頑張ってたくさん出すから!アキラ君ー!
(5)
ハッと目が覚めると、全身に脂汗をかいていた。
隣を見るとアキラが満ち足りた美しい寝顔で安らかな吐息を立てている。
今宵、ベッドの周囲にはムチやピンヒールや蝶々を模した黒い仮面が転がっていた。
たまにはこんな趣向もと思って緒方が用意したSMセットが気に入ったらしく
今日のアキラはその手のプレイが初めてとは思えない一流の女王様っぷりを魅せてくれた。
縛り上げられムチ打たれた背中がヒリヒリと痛むが、
その後で黒い網タイツにガーターベルトなどというマニアックな格好をしたアキラに
いい思いもさせてもらったし、などと寝顔を見ながらついニヤケそうになった瞬間、
下腹部をキリキリと突き上げる鈍い痛みがあった。
慌ててベッドを抜け出しトイレに駆け込む。
背後でアキラが「ん・・・」と寝返りを打つ音が聞こえた。
思い起こせば十数年前、師匠の家でトイレに籠もっていた時
幼いアキラがいきなり鍵の掛かっていないドアを開けて乱入してきたことがあった。
当時トイレトレーニングが済んだばかりだったアキラは、すっかりお兄さんになった
気分だったらしい。
自分が母親にされていたのと同じように便座に腰掛けた緒方の膝に小さな手をかけ
ニコニコと励ましてくれるアキラの前で、緒方は出る物も出なくなってしまったのだ。
あの時の思い出と今日の珍しいプレイと、たまたま起こった便意とが混ざり合って
あんな奇妙な夢を見てしまったのだろう。
(6)
便座に腰掛けほっと力を抜いて、あの悪魔的な衝動を半分ほど外へと押し出した時
いきなりガチャッとドアノブが回りかけた。慌ててノブに取り付き抑える。
鍵を掛けると、向こう側で残念そうにカリカリカリ・・・とドアを掻く音が聞こえた。
相手の姿が見えないことで身も凍る恐怖を感じた緒方は恐る恐る聞いた。
「・・・アキラ君か?」
「他に、誰がいるって言うんです」
ほっと息をつきながらも緊張は解けない。こういう時は一人になりたいものなのだが。
「向こうに戻って少し待っていてくれ。すぐ空けるから」
アキラも夜中に目が覚めてトイレを使いに来たのだと思った。
だがよく考えてみれば隣で寝ていた自分が消えていてトイレの電気も点いているなら、
自分がここに入っていることはわかりきっているはずだ。
それを承知でアキラはドアを開けようとしたのだろうか?
嫌な予感は的中したらしくアキラがドアの前から立ち去る気配はない。
「アキラ君、そこにいられると落ち着かないんだ」
懇願するように言った。
アキラはクスクス笑って脅すようにまたドアノブをガチャリ、と鳴らす。
開かないと分かっていてもドキリとする。
出かかった物は半分は体外に中途半端に出、半分は途中で引っ込んでしまっていた。
(7)
このままでは体に悪いだろう。
何としてもアキラに帰ってもらって出すべき物を出してしまいたい。
「アキラ君」
「ボクがここにいると、困ります?」
「ああ。だから、しばらくあっちに」
「そうか、困るんだ・・・そんなこと言われると、もっともっと困らせたくなっちゃう・・・」
「あ、アキラくん?」
「開けてくれないなら、ボクここでドアに耳をつけていますから。
緒方さんの音、ちゃんと聞かせてくださいね」
「お、おい」
外側から換気が止められた。
「緒方さんの後って、どんなにおいがするのかな・・・」
「アキラ君!まだ十代の子供のくせに、そんな変態みたいなことを考えなくてもいい!」
「変態みたいなことをボクに教えたのも緒方さんじゃありませんか!
今日だってボクにこんなもの穿かせて、あんな恥ずかしいことさせて・・・
それに、ボクのことを好きならボクに恥ずかしいことさせるばっかりじゃなく、
ボクにも緒方さんの恥ずかしい所、見せてください・・・」
それはもっともな言い分という気もする。
だがそれとこれとは話が別という気もする。
とにかくアキラにそこにいられては、健康的な排泄行為が阻害されてしまうのだ。
「なあ、・・・頼むよ」
「・・・お願い・・・」
逆に儚げな声で頼まれて、緒方はついに降参した。
(8)
げっそりとなってトイレから出てきた緒方にアキラは大輪の花のような笑顔で言った。
「今度する時はボクも中に入れて、見せてくださいね!」
「毎回これじゃ、オレの身が保たないぜ」
「すぐ慣れますよ。ボクだって緒方さんに色々されるの、すぐ慣れちゃったし」
「だがなあ、これは健康に関わる問題だぞ。今もオマエが外にいると思ったら、
半分くらいは引っ込んじまった」
「それじゃ、この間見せてくださったビデオの中に看護服の女性が患者さんを浣腸する
場面があったじゃありませんか。あれだったら嫌でもお腹がゆるくなりますよ。
ボク、次はあれやってみたいなぁ」
刺激的な格好のままでうきうきとベッドに戻るアキラの後ろ姿を見て、
それもこれも自分が教え込んだこととは言え何故こんなことになったのかと
溜め息をつきながら、
そう遠くない将来に自分が浣腸器具ととアキラに似合いそうな白いナース服と、
リボン付きの箱に入った純白の白鳥のおまるとを買って帰る姿が、
鮮やかに緒方の目の裏をよぎって消えた。
<終>
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