Shangri-La 20
(20)
ヒカルは、焦っていた。
冴えていると思っていた頭には、なぜか蜘蛛の巣が張っていて
深い霧の中を彷徨しているように、方向が定まらないまま
ただ石を置くことしか出来なかった。
アキラはアキラで、あまりの酷さに目を覆った。
今日のヒカルの手筋は見るも無残で、首をかしげながら置いていく石の並びは
冴えているとはほど遠い状態だった。
「ねぇ進藤、まだ、打つの?」
アキラの問い掛けには答えず、ヒカルは黙って石を置いた。
これ以上、どう足掻いてもひっくり返るはずがないのに
今のヒカルにはそれすらも分からないようだった。
「無理だよ。それでボクがここに置いたら?」
アキラはとどめを刺した。
ヒカルはしばらく考え込んで、ありません、とつぶやいた。
「進藤、本当に大丈夫?」
ヒカルは黙っていた。改めて盤面を見ると、今日の碁はひどいと思う。
なぜか頭がひどく重かった。
「検討、する?」
「いや…いいよ。なんかひでぇな、オレ」
「――そうだね…。」アキラは溜息をついた。
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