守って!イゴレンジャー 20


(20)
あと一歩遅ければ自分は確実に殺されていた──伊角は過ぎ去ったはずの恐怖に身を震わせる。
そんな伊角の命の恩人で実は兵器マニアの白川は梯子からひらりと飛び降り、
伊角に向かって「怪我がなくて良かった」と安心したように微笑んだ。
次いで足元に横たわる井上さんmeに懐中電灯のような物を向け、青白い光を浴びせかけた。
「白川先生。それは一体何ですか?」
伊角の問いに、白川はしたり顔で答える。
「これは“フォーマット・ライト”と言って、この光線をあてるだけで井上さんmeを初期化する
 ことが出来るんだ。いっそのことXPにバージョンアップしたいところだけど、まだ開発部から
 許可が下りなくてね。ちなみに井上さんXPの特徴は、敵の心音、体温をちゃんと識別して攻撃
 できるところかな。さっきのように死んだ真似なんて子供だましは絶対通用しない。
 楽しみだな…これを搭載すれば、進藤君は無敵だよ、フフフ」
「いや、それだけは勘弁してください……」
「こちら中継地点A。井上さんme、無事フォーマット完了。一旦回収します」
白川は総司令部に連絡を入れると、鮮やかな手並で井上さんmeを背中のリュックに仕舞い込んだ。
「さぁ、和谷君も越智君も下りておいで。戦いは二日制になったんだよ」
「二日制〜?」
同じ頃、棋院ロボの内部で奈瀬も同じ台詞を口にしていた。
「二日制ですって?」
「戦隊物のお約束として対局は太陽の出ている間に決着をつけるべし!今日は日没も迫っておる。
 よってこの勝負、二日制とし、規定どおり封じ手を行う!立会いは僭越ながら本因坊である
 このワシが務めさせてもらうぞ」
拡声器片手に桑原本因坊が声高らかに宣言する。
「帝國側の封じ手はそこの蛾!」
「蛾…まさかオレのこと〜?精霊つかまえて蛾呼ばわり〜?」
「棋院側は……はて。誰にしようかの」
桑原があごをさすっている間、ヒカルとアキラは検問で二日制の説明を受けていた。
「勝負は明日に持ち越しとなりました。今は戦況を棋譜に書き写している最中ですので、
 二人とも盤面から出ないで下さい」
「盤面?」
「戦場のことだ、レッド」
戦場を盤面に置き換え、各人の立ち位置を棋譜紙に記入する。ヘリの中で記録係が行っている仕事だ。
その際、対戦中の人間が誤って盤面からはみ出さないよう、また逆に一般市民が紛れ込まないよう
チェックするのが検問である。ヒカルたちはどうやら盤面の端っこまで移動していたらしかった。
「たった今連絡が入りました。棋譜紙への記入は終了したそうです」
「じゃあ動いていいんですね?」
「帝王は結構ですが、進藤君はダメです」
「なんで!?」
「棋院側の封じ手が進藤君に決まりました。クレーンをこちらへ!」
拉致誘拐はイゴレッドの十八番、今回もヒカルはあっさり網にかかり、
そのまま巨大な茶封筒の中に閉じ込められてしまった!
いよいよ次週やっとこさ最終回!好手戦隊・イゴレンジャー!!



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