初めての体験+Aside 20
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「お湯がない」と可愛く訴えるヒカルに
「沸かしてこいよ。」
と、アキラは傲慢とも取れる言い方で返した。いつものアキラなら、こんな言い方をしない。
―――――関白宣言!?いや、それより進藤を台所に追いやって、その間にオレに何を
するつもりなんや!?
社の心臓はフルマラソンをした後のように、ドキドキしていた。
「え――!?お前が抜ける番じゃんか!」
ヒカルが言い返した。
―――――そうや!ガンバレ!進藤!
こんなに小さくて可愛いヒカルに頼るなんて、情けないことこの上ないが、この後の
展開が容易に想像できるだけに、是非ともヒカルにはがんばってもらいたいと切に願う
社であった。(長い上にくどい)
社が二人の戦いをドキドキしながら見守っていたとき、タイミング良く玄関のチャイムが
鳴らされた。
「倉田さんだろう。」
チッと小さく舌打ちをして、アキラは玄関へと向かった。
社はホッと胸をなで下ろすと、自分も台所にお湯を沸かしに行くために立ち上がった。
ヤカンに水を入れながら、ふと気が付いた。
「オレ、お湯とかお茶とかゆうとる…」
いつの間にかうつったらしい。
「もぉ―進藤が可愛いからオレにまでうつってしもたやんか(はあと)」
思わずヤカンに“の”の字を書いた。アキラも同じ言葉遣いだったことは、すでに
社の脳内から抹消されていた。
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