失着点・展界編 20


(20)
すれ違う人々が、皆そういう目で自分を見ているような気がした。
繁華街の中を、彷徨っては立ち止まり、誰かに見られているような気がしては
またふらふらと彷徨う。朝まで横になれて、いざという時トイレが使える処を
探す。一つ先の駅の近くに終日営業のボーリング場があった事を思い出した。
「先生があれだけしかお飲みにならないなんて、意外でしたなあ。」
「少し控える事にしましたので。…それではここで、失礼。」
雑居ビルのエレベーターからそんな会話をしながら路上に出たその男は、
相手と別れるなりスーツの内ポケットからタバコとライターを取り出し
タバコに火を点けた。そこから駅までは近い。
男は電車ではなく、駅前のタクシー乗り場に向かうため歩き出した。
「…おや?」
男は人込みの中に、見覚えのある特徴のある髪の色をした少年を見かけた。
ボーリング場のネオンに照らされた小さな噴水を囲むように植え込みがあり、
カップルや携帯をかける若者らが腰掛けている。ヒカルもそこに座った。
膝がガクガクと小刻みに震えた。思っていたより歩き過ぎてしまった。
「…塔矢は、今、どうしているのかな…。」
旅先のホテルで、さっそく手に入れた中国語の棋譜の本のページをめくる、
そんなアキラの姿が頭に浮かんだ。フッと口元が弛んだ。
だが、すぐに苦しげに唇を噛む。痛みが本格的に戻って来たのだ。
…今、さっきのような男が話し掛けて来たら、思わずすがってしまうかもしれ
ないと思った。お金は要らないから、休めるところに連れて行って欲しいと。
「こんな時間に、こんなところで何をしているんだ。」
ヒカルがその声が自分に向けられているという事と、それが聞き覚えがある
声だという事を認識するのに、多少の時間を要した。



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