うたかた 20
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家に連れ帰って二日目に、そのウサギは冷たくなった。
(────まだ名前も決めてないのに。)
電気を点けるのも忘れて、薄暗い部屋で加賀はウサギの横顔を見つめた。
『ウサギは寂しがり屋でね、』
ウサギ売りの声が耳の奥でよみがえった。
こいつを受け取ったときに聞いた言葉。
『ウサギは寂しがり屋でね、愛情を惜しみなく注いでやらないと、すぐに死んでしまうんだよ。』
自分がウサギに注ぐ愛情は、不足していたのだろうか。
「おい、ウサギ」
横たわるウサギの赤い瞳は、もう開かない。
「ごめんな。」
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