○○アタリ道場○○ 20 - 21
(20)
<おかっぱの国から2003・秋の巻>
(1)
久しぶりに我が塔矢家では親子三人が揃い、静かな秋の日を楽しんでます。
都会の木の葉が赤や黄色、そして茶色に色づいて、秋を通り越して冬がすぐ近くに
佇んでいる気配すら感じます。
今年は夏や秋が短いようですね。
今日は恒例の研究会の日ですが、少し趣向を変えて場を庭内に移すことに
なりました。
ボクの家の庭には大きな紅葉の木があり、葉が真っ赤に染まってとても綺麗です。
その木の下にゴザを敷いて、お父さんや門下生達が碁を打つのです。
深紅の紅葉のはらはらと風に舞うなかで碁を打つ・・・・・・絵になる風景だと思います。
爽やかな秋風が庭を吹きぬける中、お父さんが碁盤前に座り、研究会が始まった
ちょうどその時です。
お父さんの首のえり口に、紅葉の木から毛虫がポトリと落ちるのをボクは目撃
しましたっ!
でも真剣に門下生達と碁の検討をしているお父さんは、その事に気付いていない
ようです。いえ・・・、お父さんはわかっているようで、身体をプルプルと小刻みに
震わし、眉毛をビクビクと微妙に動かしています。
ああ、そうなんですね。
元名人という名に恥じない立ち振る舞いはしまいと思い、耐えているんですね。
お父さんがそのようにされるのなら、ボクもこの目で見たことは忘れましょう。
だけど顔中に脂汗をかき、ゴザにカリカリと爪をたてている姿・・・・・・・。
ボクは見るに耐えませんっ。
──お父さん男はツライですね・・・・・。
(21)
(2)
しばらく研究会は続くと、どこからとなく芋の焼けるイイ匂いがしてきました。
辺りを探ると、お母さんが庭の落ち葉などを集めて火をつけて芋を焼き、
「皆さん、少し手を休めてはいかが。お茶にしましょう」
などと、ノー天気な提案をしました。
「はいはいはああ〜い! そうしましょったら、そーしましょ! 」
さっそく芦原さんが、金ちゃん走りで焚き火のそばに一番乗りで行きました。
他の門下生達も席を離れるので、仕方なくボクも付き合う事にしました。
焼き芋はほど良く焼けていて、ホクホクして美味しいです。
うーん、芋は金時が最高ですねえ。
―――!
なぜかどこからともなく魚が焼ける匂いもします。気のせいでしょうか?
いえ、気のせいじゃなく確かにこの匂いは焼き魚です。
はうっ!?
いつの間にか木の枝に刺されたシシャモが焚火に当てられ、じゅ〜と香ばしい
音をたてながらイイ焼き具合になっています。
そのシシャモを手にしたのは・・・・・・あああ・・・・・・緒方さんでした。
田舎のお母さんが送ってくれたシシャモを、なんでボクの家の庭でわざわざ
焼くんですかっ!?
ったく、いいかげんにしてください!
ははうっ!?
こっ、今度は緒方さんの横で芦原さんが餅を鉄串にさして焼いてます。
どこから餅を持ってきたんですかあああっ?
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