失楽園 20 - 21
(20)
ヒカルの人差し指の第2関節部分は吸われた強さで赤くなっていたが、歯を立てた跡はなかった。
「…こんな調子でオレを吸ってくれるなら咥えさせてやってもいいが」
緒方はその手を取り、傍で立つアキラに近づけて確認させる。アキラは軽く目を伏せ、決して
顔を上げようとはしなかった。
緒方は呆れたように肩を竦ませ、ヒカルの右手をベッドの上に放った。
カチャリ……と金属の触れ合う音が部屋に響く。緒方がベルトを緩めた音だった。
「――やっぱり噛み千切られそうだな。オマエにも、アキラくんにも」
緒方はククと喉の奥で笑いながらスラックスのボタンを外すと、ひどくゆっくりとした仕種で
ジッパーを下ろす。
自分の身体を抱きしめて目を閉じていたアキラは聞きなれたその音に反応した。顔を上げ、
緒方が自分の前立てを開き、自分のジュニアをズルリと取り出すところを凝視している。
赤黒い緒方のそれは半勃ちの状態だったが、それでも十分の質量を感じさせた。
「さっきから…イイ思いをしてるのはオマエだけだろう?」
自分の性器の逞しさを見せつけるように、緒方は側面に軽く指を滑らせ2・3度撫でた。
それだけで緒方の牡の部分はより硬度と巨きさを増したようだった。
(21)
赤黒くグロテスクな形をしたものが視界の端に映ると、光を無くしていたヒカルの瞳に僅かに
怯えが走った。
大人のそれはヒカルの想像を絶する巨きさだった。
ホテルに備え付けてある程度のアダルトビデオすら、ヒカルは見たことがない。ヒカルは未だ
自分のものとアキラのものしか見たことがなかったのだ。
目を見張って息を呑んだヒカルの様子を、緒方は目を細めて観察している。
「デカいか? ――大丈夫だ。アキラくんはいつもこれを咥え込んでる」
緒方は上機嫌にクスクスと笑いながら、立ったままのアキラへと視線を流した。
アキラはヒカルと同じく緒方の牡の部分を凝視している。緒方の台詞が耳に届いたのか、その
白磁の頬は朱を刷いたように染まっていた。
直接的な言い方は、ワザとなのだろう。ヒカルに言うように見せかけて、緒方が実際期待して
いるのは、アキラへの効果だ。それがわからないほど、ヒカルは愚鈍ではなかった。
「慣れると、自分から腰を振ってねだってくるようになる。自分で入れたり出したり……信じら
れないだろうが、ストイックなように見えてアキラくんはとても快楽に貪欲だ」
「………っ」
ヒカルは信じられないような気持ちでアキラを見上げる。しかし、緒方の発言のほとんどが
真実であることも、ヒカルは理解していた。
アキラを責めるつもりはなかったが、アキラはヒカルの視線から逃れるように顔を背けて目を
固く閉じる。
何かを堪えるように固く握り込めた拳はブルブルと震え、その額には汗を滲ませていた。
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