スノウ・ライト 20 - 22


(20)
アキラ王子はヒカル姫のうるわしい瞳にくぎづけとなりました。
「ああ、美しいヒカル姫。ボクの花嫁になってください」
アキラ王子は手をさしのべました。ヒカル姫はその手にそっと自分の……。
「やっぱり納得できない!! 何で進藤がお姫さまなのよ! おかしいじゃない! 
普通はわたしでしょ!?」

『奈瀬くん! ここはきみの出番ではないよ!』

「なのにこんないじわるな継母の役なんて冗談じゃないわ! わたしは碁会所のおやじを
手玉にとっちゃうくらい、いい女なのよっ」
「自分でいい女だなんてよく言えるね」
「越智! うるさいわよ!」

ガタガタガタッ!!

「ここはヒカルたんハアハアが集まってるんだから、ヒカルたんがヒロインで当たり前
だろ!!」
「そうだそうだ! ヒカルたんこそが俺たちの光なんだ!」

『お客様! どうかお席をお立ちにならないでください! どうかどうか!』

「ヒカルたんバンザイ! 存分に俺たちをもてあそんでください!」
「ハアハアハアハアハアハアハアハアハアハア!!!」

「進藤! こんな人たちを相手にする必要なんかない! キミの相手はボクだけだ!」
「と、塔矢、落ち着けよ! おまえまで取り乱してどうするんだよ」
「だいたい、いつになったらキミはボクの気持ちに応えてくれるんだ!」
「おい塔矢! 俺たちだっているんだぞ!」
「キミたちがボクにかなうとでも?」
「何だよ! その笑いは! ちょっと強いからって調子に乗るなよ!」
「ちょっと? キミたちとボクの差がちょっとだとでも思っているのかい?」
「どういう意味だよ!」
「ああ、もう! みんなやめろよ! やめろったら!! 〜〜〜オレ、もう帰るっ!」

『も、もうダメです! カ、カーテンを!! カーテンを早くおろしてください!』


(21)

「塔矢、おまえが取り乱すから、舞台がめちゃくちゃになっちゃったじゃないか」
「緒方さんが悪いんだ。なぜ勝手に台詞を変えたのです?」
「アキラくん、俺が台本どおりにセリフを言う男だとでも思ってたのかい?」
「……もうあっちに行ってください!」
「やれやれ。わかったよ」
「おい塔矢、緒方先生にあんな口をきいたらまずいんじゃないの」
「……進藤、今からお城に行こう」
「は? 城?」
「そうだ。壁は鏡張りで、ベッドは回転し、様々な色をしたライトが部屋を照らすんだ。
 プールもあるし、楽しい玩具もある。どうだ、進藤」
「でもみんなで打ち上げがあるし」
「……わかった……」
「わぁっ! 何すんだよ、おろせ!」
「きみがそのつもりならボクも――――」
「やめろよっ、塔矢! んんっ、あぁっ……」


(22)

役者さんが出てまいります。
みなさま、盛大なハァハァでお迎えください。

まずはヒカル姫役の進藤ヒカルくん、アキラ王子役の塔矢アキラくん!

…………あれ、出てきませんね…………。

え!? 二人が見当たらない? どこかに行った? そんな……!
お客様、どうかお静かに、お静かに!
ああ! 役者の方々も地団駄しないでください! 床が、床が、ああ!
カ、カーテンを!! カーテンを早くおろしてください!



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