平安幻想異聞録-異聞- 202
(202)
妖女の手管にまんまとはまって、夢心地にたゆたっていヒカルの背中に
冷気が走った。
逃れようと必死に肘を床について、体をずりあげると舌も延びてヒカルの
体を追いかけてくる。
ヒカルが更にずり上がる。舌が追いかける。それを何度か繰り返すうち、
緩んだ拘束をやり直すように、再び十二単衣が重くヒカルの体を縛った。
舌がヒカルの後腔から滑るように入り込んだ。
人では絶対にありあない奥深くまで届く、おぞましいだけの筈のそれに、
ヒカルは感じて声を上げていた。
それは、今までヒカルを抱いた誰も達していない奥の処女地を犯し、
自在に動くその尖端を使って、そよそよと内部を苛む。
中でウネウネとくねるそれは、身の内に巨大なミミズを入れているような
ものだった。
ヒカルはいつの間にか、それが一番いい所に当たるように、自ら腰を使い
始めていた。
「どうしました?」
佐為が、突然立ち上がったアキラを怪訝そうに見た。
竹林での探索は困難を極めた。
あの暴行からすでに十五日以上たっている。成長の早い竹は、一度立ち切られた
根もすぐに再生して地中の壺を押し包み、地面に降り積もった葉は、その土が
掘り返された痕跡も隠してしまう。ましてや、ヒカルが暴行を受けた痕跡など、
どう探せばいいのか見当もつかない。
それでも二人は鋤で落ち葉をかき分け、竹の傷に不自然なものはないか、
新しいものはないかと、懸命に目をこらしていた。
落ち葉が踏みしだかれ、竹が荒々しく踏み倒されているのを発見して、
そのあたりにこんもりと積もった枯葉をかき分けてみれば、争った揚げ句に
相討ちに終わったらしい猪と野犬の死体だったりした。
その光景に佐為が嘆息した横で、アキラが突然立ち上がり東の空を仰いだのだった。
「何か、嫌な気配がします。よくは分かりませんが、良くない気配です」
|