平安幻想異聞録-異聞- 208


(208)
頭の隅の何処かが、これは魔物の手だと警告するのに、
自分を抱きしめるのが佐為なのだと思った途端、体の温度が上がった。
肌に噛みつかれるような乱暴な愛撫にも体が悦んでざわめいた。
抵抗しようとしていた体から力が抜けた。
佐為の唇が頬から首、鎖骨、胸やヘソの上を、赤い印を残すように
吸い立てながら移動していく感覚を、貪欲に受け止める。
唇が、ヒカルの下腹部にたどりつき、屹立しはじめた陰茎を舌で愛撫し
はじめた。やがて美しい人の口が、自分の幼い男根を含み、しっぽりと
飲み込み、舌でしごきたてる感覚に、ヒカルはあっという間に蕩かされて
果てた。
佐為が、片足に手を添えて、さらに足を開くように即す。
ヒカルは、自らその片足を、佐為の肩の上に持ち上げて乗せた。
佐為に求められれば、ヒカルは何でもしてやりたくなってしまう。
甘やかしてやりたくなってしまうのだ。
優しくて、誰より傷付きやすい佐為。
どんな恥ずかしい格好も、どんなにあられもない嬌声をあげることも平気だと
思えてしまう。
――佐為、おまえにオレの心も体も全部やるよ。
――だから、おまえずっとオレの側にいろよ。
再び、その幼い男根への舌戯がはじまった。
腕を押さえつけられ、鬼に上体の自由を奪われたまま、
反り返ったヒカルの喉が倒錯的にヒクヒクと震えた。
蕩けるような声が、灯明のひとつも灯されていない暗い部屋に響いた。
「…そこはっ…ヤ…」
陰茎を愛撫していた佐為の唇が、小振りな陰嚢に降り、さらに秘口の
入り口に触れたのだ。
だが、ヒカルは羞恥に頬を染めながら、足を閉じようとはしなかった。



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