初摘み 21
(21)
「…!や…やめろよ!」
アキラがヒカルの胸を弄り始めたのだ。ヒカルは堪らず、アキラを振り返った。
「やっぱり起きてた。」
悪戯っぽく笑って、ヒカルの鼻先にチュッとキスをした。
アキラはヒカルの身体を自分の方に向けると、あらためてヒカルを抱いた。ヒカルの
頭を自分の胸に押しつけるようにして、掻き抱く。ヒカルは、アキラを上目遣いにちょっと
見て、それからアキラの胸に顔を埋めて小さな声で訊ねた。
「あの…あのさぁ…塔矢…」
――――――オマエ、初めてじゃないよな?
「ん?」
アキラが顔を覗き込む。ヒカルが可愛くてしょうがないという顔だ。優しい目で見つめられて
ヒカルは口ごもった。
「……何でもない…」
気になるけど…何だか、それを訊くのはルール違反のような気がする。
――――――でも、今はオレのものだよな?
ヒカルは、アキラの胸に顔をすりつけて、その背中に腕を回した。
「初めてだよ…」
ヒカルが顔を上げた。どうしてわかったんだろうか?
「本当に好きな人とは初めて…」
そう言って、アキラはヒカルにキスをした。
それって初めてじゃないじゃん―――――と、言いたかったが、『好き』という言葉が
とても嬉しかったので、アキラに大人しく抱かれていた。
ヒカルは、初めてが好きな人だった。
――――――また、しような…塔矢
ヒカルはいつの間にか、アキラの腕の中で眠ってしまった。
おわり
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