しじま 21
(21)
温かさは冷たさを凌駕する。
毛布のなかにすべりこんで、進藤を抱きしめる。
前よりも身体つきが大人のそれに近付いてきているのがわかる。
きみはもっと男らしくなるだろう。
でもそれでもボクはきみを抱きたいんだ。きみに抱かれたいんだ。
「ねむい……電気けして……」
進藤がボクの胸に顔を押しつけながら言った。
電気を消すと、すぐに進藤の呼吸が変わった。もう寝たのか。
こんなに早く眠れるなんてうらやましい。
ボクは進藤の背中に手をまわして、さらに肌を密着させる。
ああ、動くとお尻の穴が痛い。
和谷としたときのように、身体のそこここが痛んで、熱も出るのだろうか。
だけどあのときのような苦みはきっとない。
進藤の寝顔を見ようとボクは目をこらす。だけどまだ目が慣れていなくて無理だった。
あきらめて、今度は耳をすました。
ボクはいつも暗闇のなか、きみの幻聴を聞いていた。
だけど今はそんなのは少しも聞こえなくて、きみの寝息だけがボクの耳をくすぐる。
温かくて、幸せで、言葉に出来ない想いが胸のなかにあふれる。
ボクの寝息がいつのまにか、進藤のそれに重なって、夜の空気のなかにとけこんでいく。
こんなに穏やかな静寂を、今までボクは知らなかった。
―――終わり―――
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