トーヤアキラの一日 21


(21)
アキラは、この一ヶ月の自分の気持ちをとつとつと語った。
「キミが碁会所から出て行った日から、キミの事ばかり考えていた。キミに会いたい、
キミと話がしたいって。・・・・・キミと会って碁の話が出来ない事が、これ程辛いとは
思わなかった。・・・・・こんな気持ちになったのは生まれて初めてだったから、すぐには
分からなかったんだ。・・・・・でも、キミの事が好きだと気付いた。・・・・・今日キミに会えて
話が出来て本当に嬉しい・・・・・。進藤、キミの事が好きだ」
心臓は相変わらず高鳴っていたが、告白する事で感情を吐き出したためか、気持ちは意外に
落ち着いていた。話しながらも、ヒカルの表情を一瞬たりとも見逃すまいと、ヒカルの
顔から視線を逸らすことはしなかった。
最初ヒカルは、驚きの表情で話を聞いていたが、そのうち真剣な表情に変わった、そして
徐々に何かを考えているような困惑した表情になった。
アキラが話し終わると、暫くの沈黙の後、
「オレ、どうすればいい?告白された以上、返事をしないといけないんだよな?」
そうヒカルが聞く。アキラは少し返事に詰まったが
「キミの気持ちを聞かせて欲しい」
と身を乗り出して言うと、ヒカルは
「考えてみる」
と言って、さっさと先に店を出て行ってしまった。

そのヒカルの後姿を見送りながら、アキラは告白したことを後悔し始めていた。
今日はヒカルに会って、自分の気持ちを確かめるつもりだった。告白するつもりは全く
無かったのに、ヒカルの言葉に勝手に煽られて告白してしまった自分に腹が立つ。
話した事で、アキラ自身はある意味スッキリしたが、重い気持ちをヒカルに押し付ける
結果になってしまったかも知れない。



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