無題 第2部 21


(21)
翌日、いつも通りに登校し、授業を受けたが、内容はさっぱり入ってこなかった。
持ち回りなんだから、と押し付けられた図書委員の仕事が終わると、外は日が暮れ始めていた。
何となく人恋しくて、今日は一人のアパートには帰りたくなかった。
とはいえ、行く所などそれほどある訳ではない。自然と、アキラの足は碁会所へ向かった。
市河の元気な声を聞けば気分が晴れるかもしれない、と思った。
ずっと、うつむき加減で歩いていたから、ビルの碁会所のフロアに電気が点いていない事にも
アキラは気付かなかった。
ドアの前まで来て、初めて室内は暗く「本日定休日」の札がかかっているのに気付いた。
「休み、か。」
なんだか本当に体中の力が抜けてしまって、がっくりと廊下の壁にもたれかかった。
どうしよう。どこにも、行く所なんか、ない。
芦原さんにでも連絡してみようか、そう思って、アキラは芦原の携帯を呼び出した。
「お、アキラか?どうした?」
「え…と、特に用事って訳じゃないんですけど…」
「あ、ゴメン、ちょっと待って。」
アキラの言葉を遮って、誰かと話をしているようだった。
相手はきっと女性だ。アキラは直感的にそう思った。
「ゴメンな、何?」
「ううん、何でもないんです…どなたと御一緒なんですか?」
「え?えーと、アハハ…。」
電話の向こうで芦原が照れ笑いしているのが伝わってきた。
「ほんとに、大した用事じゃなかったんです。どうも、お邪魔して済みませんでした。」
そういって、通話を切った。



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