Shangri-La 21
(21)
「あ、もうこんな時間だけど、食事はまだだよね?何食べる?」
時計を見ると、まもなく9時を迎えるところだった。
「あぁ、オレ、いらない…腹へってないし」
「だめだよ、ちゃんと食べないと」
ヒカルは顔をしかめた。
「だからいいってば…腹へったらちゃんと食べるし」
「良くないよ。少しでもいいから何かお腹に入れてさ――」
「だから、要らないって!」
ヒカルは酷く顔を歪めて勢い良く立ち上がると、部屋を出て駆け降りた。
アキラは何が起きたのか分からなかったが、慌ててヒカルを追った。
ヒカルはトイレでへたり込み、嘔吐していた。
「進藤?」
何度も、何度も、苦しそうに胃液を絞り出したヒカルは
ようやっと落ち着くと、涙を浮かべ苦しそうにあえぎながら口を開いた。
「お願いだから、食べる、とか、食べ物の話とか、やめて…」
「え?」
「そういうの、ダメ…胃になんか入るかと思うと、気持ち悪い……」
そう言うか言わないかのうちに、ヒカルは床に突っ伏した。
確かに、ヒカルが固形物を吐いた形跡はなかった。
(食べる事に拒否反応が出るなんて…)
アキラはヒカルの隣に座り、ヒカルの頬を膝の上に乗せ
ヒカルが収まるまで、髪をそっとずっと撫でた。
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