守って!イゴレンジャー 21
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「封じ手」は人質のようなものだ。これはお互いに夜襲攻撃を避ける為の措置で、誰を封じるかは
立会人に一任されている。今回の封じ手はアシワラーとヒカル。封じ手に選ばれたものは問答無用で
茶封筒に封じられ、ホテルの貸金庫に一晩保管された後、翌朝開封となる。
ちなみに茶封筒の中は2LDK並の設備が整っていると言う噂だ。
「明日の対戦は午前九時スタートとする!双方、寝過ごさぬよう気をつけるんじゃな」
桑原の号令を合図に本日の対戦はとりあえず終了した。
やれやれ疲れたのーと肩を回す桑原に、イベント係が声をかける。
「桑原先生、封じ手はこちらでホテルまで運びましょうか?」
「そうしてもらえると助かるのう…いや、イゴレッドのほうはワシの部屋に運んでもらえるかな?」
「それはかまいませんけど…」
「なら、頼む」
──その夜、桑原とヒカルが揃って姿を消した。
封じ手が消えてしまっては対戦どころではない。
結局勝負は引き分けとなり、翌日は丸一日二人の捜索に費やされた。
どこを探しても二人が見つからない。そもそも二人が一緒に失踪すべき理由が存在しないのだ。
関係者一同が頭を抱え始めたその時、事態は意外な展開を見せた。
二日後、少年帝國にて反乱が起こったのだ。
首謀者は帝國執事とプロ棋士という二束のわらじを履いていた桑原本因坊!
しかもヒカルを人質にとっている為、帝國軍と日本棋院が急遽同盟を結び鎮圧に乗り出した。
だが反乱軍もなかなかしぶとく、戦場を他の星に移して早一ヶ月が経過。
停滞ムードに業を煮やした日本棋院開発部が試しに“井上さんXP”をイゴレッドに転送、
上手く発動した井上さんXPが惑星を丸ごと消滅させたところでようやく終焉を迎えた。
これを、『本因坊の乱』という。
無事地球に生還したヒカルは、今もイゴレンジャーとして元気一杯活躍している。
仲間と共に地球の平和維持と囲碁普及のため、悪と戦う毎日だ!
帝王アキラは帝王学を学ぶ一方、場外馬券場の建設に力を入れている。
時々はヒカルを帝國に招き、昼の囲碁・夜の囲碁を同時に嗜んでいるようだ。
伊角は泌尿器科で治療を受け、悪い習慣を改善すべく頑張っている!
さて、騒ぎの首謀者である桑原本因坊は他の星へ逃亡。
自らが主となり、一大国家を築き上げた。
その星が後に有名な作品『2050猿人の旅』のモデルになった事は言うまでもない。
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