金魚(仮)(痴漢電車 別バージョン) 21
(21)
駅のすぐ側に、小さな公園があった。辺りに人気はまったくない。いくら何でも静かすぎないか?
デート帰りのカップルが立ち寄るには早い時間なのだろうか…。人気のない場所にヒカルを
引っ張り込んだと、誤解されはしないかとドキドキした。
アキラは、手近なベンチに彼を座らせ、自分も隣に腰を下ろした。ヒカルは未だに
シクシクと泣き続けている。
「悪かったよ…」
二度目の謝罪を口にする。
「……で………だよ………」
ヒカルが何か言ったが、しゃくり上げながらだったので聞き取れなかった。
「何?」
「なんで…オレには…意地悪ばっか…するん…だよ…」
―――――え?何?意地悪?ボクが?進藤に?
アキラはポカンと口を開けた。
「他のヤツには優しいのに……オレには怒ってばっかだし…」
「ちょっと冗談言っただけで…すぐ“ふざけるな”って怒鳴るし…」
確かにヒカルの言う通りだ。
―――――でも、それは………
親愛の情の表れというヤツだ。他の連中のことなど、ほとんど眼中にないのだ。視界に入って
こないものに対して腹を立てる必要などない。ヒカルだから――ヒカルのやることだから
何でも気になるし、目につくのだ。
だけど、それがヒカルには伝わっていなかった。
『ちょっと、ショックだ…』
親しい相手にだけ見せる本当の自分を、ヒカルも理解してくれていると思っていた。でも
それは、どうやら自分の思いこみだったらしい。アキラは反省した。
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