少年サイダー、夏カシム 21


(21)


  「けどさ、子供扱いされんのはムカツクけど、あの頃に戻れるもんなら戻りてェな」
  「あの頃って、おまえまだガキのくせに何懐かしんでんだよ。ジジくせーヤツ」
  「だって、このキャッチコピー見たら懐かしくなっちゃってさ。それにガキでも懐
かしいって思うことはたくさんあんだよ」
  「たとえば?」
  「えっと、たとえば・・・、もうすぐ碁を始めて4年経つなーとか」
  「あぁ? 4年前? そんなのつい最近のことじゃねぇか」
  「いいじゃねーか。とにかく戻れるもんならその頃に戻ってみたかったんだよ」
  「でもまぁ、そいつはいいかもな。その頃のおまえなら、何も考えずに適当に打っ
たって即圧勝できるしな。なんてったってあの頃のおまえは口ばっか粋がってたガキ
だったし」
  「ちぇっ。なんだよそれ。まァ、そうかもしんねーけどさ・・・。でも」
  「でも?」
  「いきなり指導碁なんかやってみせてさ、強いだろオレって言って勝つかもしん
 ねーぞ」
  「ニャロゥ、なめてんのか!? 言っておくが、このオレはおまえよりもずっと
 先に碁を始めたし、院生にもなってたんだぞ」
  「・・・へへ。そうだな」
  ヒカルは一瞬悲しそうな切ない顔をしたが、そう言って笑うと、何かを懐かしむ
 かのように目を細めた。


                                   (了)



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