失楽園 21
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赤黒くグロテスクな形をしたものが視界の端に映ると、光を無くしていたヒカルの瞳に僅かに
怯えが走った。
大人のそれはヒカルの想像を絶する巨きさだった。
ホテルに備え付けてある程度のアダルトビデオすら、ヒカルは見たことがない。ヒカルは未だ
自分のものとアキラのものしか見たことがなかったのだ。
目を見張って息を呑んだヒカルの様子を、緒方は目を細めて観察している。
「デカいか? ――大丈夫だ。アキラくんはいつもこれを咥え込んでる」
緒方は上機嫌にクスクスと笑いながら、立ったままのアキラへと視線を流した。
アキラはヒカルと同じく緒方の牡の部分を凝視している。緒方の台詞が耳に届いたのか、その
白磁の頬は朱を刷いたように染まっていた。
直接的な言い方は、ワザとなのだろう。ヒカルに言うように見せかけて、緒方が実際期待して
いるのは、アキラへの効果だ。それがわからないほど、ヒカルは愚鈍ではなかった。
「慣れると、自分から腰を振ってねだってくるようになる。自分で入れたり出したり……信じら
れないだろうが、ストイックなように見えてアキラくんはとても快楽に貪欲だ」
「………っ」
ヒカルは信じられないような気持ちでアキラを見上げる。しかし、緒方の発言のほとんどが
真実であることも、ヒカルは理解していた。
アキラを責めるつもりはなかったが、アキラはヒカルの視線から逃れるように顔を背けて目を
固く閉じる。
何かを堪えるように固く握り込めた拳はブルブルと震え、その額には汗を滲ませていた。
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