誘惑 第三部 21 - 22


(21)
「あ、あぁああっーー!!」
アキラの悲鳴にヒカルは慌ててアキラを抱きかかえようとするが、かえってそれがアキラの身体に
新たな刺激を与える。アキラの口からこらえきれない声が上がり、アキラの背が弓なりに反る。
キツく締め付けるアキラの内部に意識を奪われそうになりながら、ヒカルは必死でアキラを気遣う
ように、アキラの腰を支えた。
「とう、や、」
大丈夫か、と問うように名を呼ぶと、それに応えるようにヒカルの上でアキラが首を振る。髪が乱れ、
汗が飛び散る。白い身体が薔薇色に染まっている。
「とうや、」
もう一度呼ぶと、その呼びかけにアキラはきつく閉じていた目を開けヒカルを見下ろしながら、切れ
切れに言う。
「…い……ん、だ……つ…らく、ても…」
言いながらアキラは腰を浮かす。締め付けられながら抜けていく、身体ごと意識を持っていかれそう
な感覚にヒカルが息をのんで耐えると、また、ズンッとアキラの腰が落ちてくる。
「しん、ど、もっ…と……」
ヒカルを強請るように身体を動かすと、アキラの声に苦痛以外の艶がこもる。


(22)
ヒカルの上で声をあげ、夢中で動くアキラがこのままどこかへ行ってしまうような気がして、ヒカルは
急に怖くなって、無理矢理アキラの腕を掴んで引き寄せた。倒れてきたアキラの身体を、逆に下に
組み敷いて、抱き寄せて、抱きしめて、奥深くまで突き入れる。
荒い息も、心臓の音も、飛び散る汗も、密着した肌に感じる熱さも、自分のものもアキラのものも一緒
になって、どっちがどっちのだかわからなくなる。わからないままに、いっそこのまま一つになってしま
えばいい。皮膚と皮膚との境目もわからないくらい、溶け合って一つになりたい。
もっと深く、もっと奥まで突き入れるとアキラの身体が弓なりに反り、ヒカルの頭の上で悲鳴をあげる。
逃げるな、塔矢。オレから逃げるな。
そう、声に出してはいないのに、ヒカルの声が聞こえたように、アキラの腕がヒカルの首に絡まる。鳴き
声の中に、切れ切れに名前を呼んでるのがわかる。
その声にヒカルは我を忘れた。
荒く貪るようにヒカルがアキラの内部を蹂躙すると、それに応えるように、アキラがヒカルにしがみつく力
が強くなる。ヒカルは急激に限界を感じて、アキラの名を呼びながらできる限りの一番奥で、自分自身
を解放した。



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