Trinity 21 - 25


(21)
ヒカルも切なさに震えていた。もっと深く、もっと強くアキラが欲しいのに、あと少しの
ところで退いていく汐のようにアキラは辿りつかない。もどかしくて、切なくて、
ヒカルは涙ぐみながら腰を揺らめかせた。ギュッとつかんだ腕に爪がくいこんだ。
想いはアキラに伝わった。アキラも満たされない想いに体が震えた。
「おねがい……」
首を横に回し、すがるようにアキラは社に頼んだ。涙に濡れた目が必死に訴えていた。誇りはどこかにうちやられていた。
「ようし……」
アキラの願いを聞き入れ、社は抽挿を止めた。腰を密着させると、アキラの望むように
腰を一緒に動かした。アキラと社がともにヒカルを貫いているようにみえた。アキラは
ヒカルの奥深くに楔を打ち込んだ。ヒカルはアキラを熱く包みこみ、締めつける。
「あぁ……」
その熱い襞の快さにアキラは陶然とした。待ち望んだ歓びにヒカルも涙を流していた。
「エエか?」
社がアキラの耳元でささやいた。
「いい……」
何も考えず、アキラは肯いた。快感をもっと貪りたくて、目の前のヒカルと唇を合わせ、
抽挿を繰り返した。


(22)
快楽から急に引き離された。
ヒカルへの挿入が浅くなるように、社はアキラの腰を抱え後退した。それからアキラとは
腰を密着させたまま、こねた。
「やぁっ……、あぁ……、あっ……、いゃぁっ………」
中途半端な状態で新たな快感が与えられ、下半身はドロドロに熔けていった。アキラは
自分がどこに行くのかわからなくて、身悶えした。行く先のみえない快楽の波に呑まれて
いるようだった。
社は、アキラへの抽挿と腰を密着させてのヒカルへの抽挿を交互に繰り返した。その度に
アキラの締めつけは強くなり、社の快感を増幅させていった。
社に穿たれ、ヒカルに包まれて、アキラは出口を求めていた。
「イク…ッ……」
「まだ、アカン……」
その度にヒカルから引き戻された。高みに登らされていながら、アキラの到達は
何度も阻まれた。
「はぁ…、はぁ…」
次第にアキラの口からは獣のような荒い呼吸しか聞こえなくなった。
アキラの体が紅潮するほどに、花に似たその体臭が甘く濃く社に漂ってきた。物狂おしい
想いにかられて、社はアキラの肌をまさぐった。
あまりに強い快感は、アキラを責め苛んでいた。
「お、ねが、い……、イか、せ、て……」
とうとうアキラは掠れた声で社に乞うた。


(23)
社はアキラの顎をとり、横を向かせると、くちづけた。快感に翻弄され続けたアキラは
もはやそのくちづけに応える力はなく、社のなすままに震える唇をあずけた。アキラの
甘い舌をもう一度味わった社は、満足したように赦した。社自身、限界が近づいていた。
「エエよ……」
社はアキラと体を密着させ、腰を振るアキラに同調した。
「進藤…、イク、よ……」
アキラはしとどに濡れそぼったヒカルのペニスに手をやり、擦った。
「あああーーーっ……」
ひときわ大きな声をあげ、アキラがヒカルの中ではじけた。
ヒカルも同時に声をあげ、アキラの手の中に放った。
アキラの締めつけは社の到達も促した。陶酔の中で、アキラは自分の腹部に熱いものが広
がっていくのを感じた。
3匹の獣は互いを締めつけあい、ビクンビクンと腰を揺らしあっていた。
そのままアキラもヒカルも意識をなくした。
社はアキラからズルリと抜け出ると、ハァハァと荒い呼吸を繰り返していたが、やがて
深い眠りに引き込まれていった。


(24)
ヒヤッとして目が覚めた。寝返りを打とうとして、あやうくベッドから転げ落ちそうに
なった。一瞬、自分がどこにいるのかわからず、首を巡らした。分厚いカーテンの隙間
から昇り始めたばかりの朝日が洩れ、自分たちの体をほの赤く照らしていた。
昨夜のことを思い出し、恥ずかしくなった。なぜあんなことになってしまったの
だろう……。わからなかった。いや、自分の心の奥底にあった願望が、機会を得て
強引に実現させたのだと本当はわかっていた。自分はアキラを抱きたかったのだ。

中学に入った頃、若手棋士から手ほどきを受けた。男は自分を、時に愛玩するように、
時に虐ぶるように抱いた。その期間はしばらくして終わった。自分の手が上がるにつれ、
定石を追うのがやっとのその棋士とは疎遠になったからだ。その後、男との行為に
ふけることはなかった。女は自然に寄ってきた。いずれにせよ特別、執着するほどの
ことではなかった。才能を映した、対局者を射抜く鋭い瞳を持つコイツを抱いてみたい、
という密かな願望を除いて。

昨夜の様々な痴態をみじんも感じさせず、静かな表情で眠るアキラの横顔を見て、コイツ
を仕込んだのは誰だろうと社はボンヤリ考えた。
鋭く誇り高いこの瞳を、その男はどうやって手なずけたのだろう。どうやって従わせる
ことができたのだろう。その男と別れたのは、宝物のように腕に抱く進藤のせいだった
のか。進藤、オレの5の五に天元で応えた同い年の棋士。その身を守るためなら自分を
投げ出しても構わないほどに、コイツにとっては大事なものなのか。
囲碁だけしか知らないと思っていたコイツの中にも、それ以外の感情が渦巻き、獣が
潜んでいた。取り澄ました表情の陰のその獣を、オレは昨夜手にした。この腕に抱き、
思うさま突き、欲望を遂げた。だが、穏やかな寝顔を見ていると、それはすべて幻
だったとさえ思えてくる。その獣を捕らえる日はまたやってくるだろうか。
次は対局場で会いたい、と社は思った。蔽い隠されたなにもかも、盤面は語ることが
できるのだろうか。


(25)
体の節々が痛い。成人していないとはいえ、男3人にセミダブルは狭すぎる。
社は静かに体をズラすと、ベッド脇の細い通路を抜けて、自分のベッドとの間に立った。
しばらく2人の眠る姿を眺めていた。才能が互いを惹きつけあったということか。
昨夜、3人はひとつだった。同い年のオレは、昨夜のようにコイツらとわたりあうことが
できるだろうか…。疑問が胸をよぎった。いや、必ず並び立ってみせる。新たな決意を
胸に宿すと、社はしどけない姿で頬を寄せて眠る2人にそっと羽布団を掛けた。
「北斗杯は勝つで。……その前に、もうひと寝入りしとかんとな…」
独り言ちると、床に落ちた浴衣の一枚を身に着け、社はベッドに潜りこんだ。
その時、腕からふわりと甘い香りが立ち昇った。
「……ジャスミン…、ジャスミン言うてたんや、あの花……」
清楚なたたずまいからは想像できない、官能を誘う甘やかな香りを放つ白い花を
思い浮かべると、社は再び眠りに落ちていった。
                                     (Fin)



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