無題 第1部 21 - 25


(21)
車の中では押し黙っていたが、緒方の部屋についたとたん、アキラは緒方にうるさく催促した。
煎れてやったコーヒーを差しだしながら、緒方はこんな風に誤魔化そうとした。
「実はあまり覚えていなくてな。」
「ウソですよ、そんな。そんな筈がない。自分が打った碁を、しかも予想外の相手に負かされた一局
なんて、忘れたくても忘れられない、そうじゃありませんか?」
わかったような事を言うアキラをじろりと見て言う。
「そうだな。忘れたくても忘れられるものじゃない。だからって、人に見せたくもないがな。」
「教えてくれるって、言ったじゃないですかっ…!?」
「知りたいなら来いとは言ったが、来たら教えてやるとは言っていない。」
憤慨しているアキラを置いて、一旦居間をでた緒方は、何か白いものを手にして戻ってきた。
怒ってはいても、そこは躾の良い少年だ。出されたものは頂かなければ、とコーヒーを飲んでいるアキラに、
「そら、忘れ物だ」
とキレイにアイロンをかけておいたハンカチを投げ渡した。
「え? あっ…」
そのハンカチにまつわる出来事を思い出したのか、アキラの頬が微かに赤くなる。
それを誤魔化すように、慌ててコーヒーを飲み干そうとする。
「で、続きを教えてくれそうな女はいたか?」
にやにや笑いながら、からかうように緒方が言う。
「そっちの方だったら教えてやってもいいがな。」
「もうっ!そういう冗談は止めて下さい、っていったでしょう!?緒方さんっ!!」
近づけられた緒方の顔に向かって手を振り上げる。
「ハハハ!冗談だよ、そんなに素直に反応するな。」
しかし、緒方はアキラの手を軽くかわし、逆に手首を捕らえた。
「それとも」
言葉を切って、低く落とした声で、耳元でこう囁いた。
「そんなにムキになるのは教えて欲しいからなのか?」


(22)
その言葉の意味がアキラに届く前に緒方の唇がアキラの唇を塞いだ。瞬間、目を見開いて静止
してしまったアキラのスキをついて、緒方の舌が易々とアキラの口腔内に侵入した。手首を捕らえ
たまま、ソファの背に押し付ける格好で、緒方はアキラの抵抗を押さえ、アキラの中を幾分丁寧に
からめとる。が、緒方にしてみればソフトにしてみたつもりのキスでも、アキラには十分な感覚を
与えたようで、強ばっていた手首からは既に力が抜け、緒方の手にその重みを預けている。そんな
アキラの状態を確認したかのように、緒方の顔がアキラから離れる。小さく喘いでいるアキラを満足
げに見下ろし、潤んだ瞳で緒方を見上げているアキラの耳にまた唇を寄せて、ささやいた。
「これが、『キス』だ。」

「それから…」
緒方の手が、アキラの股間に伸びる。緒方の手が軽くそれを撫でると、アキラがビクリと身を震わ
せた。それに応えるように緒方がズボンの上からギュッと握った。
「なっ何をっ…!?」
「…教えてやるって言っているだろう…?」
耳元に息を吹きかけるように囁きながら、アキラのズボンのファスナーをおろし、抵抗する間も
与えず手早くそれを手中に収めた。
「あっ…やめ…」
それから抗議の声を発せないように、その口を塞ぐ。今度は先程よりも、深く荒っぽいキスを与え
ながら、同時にアキラの若いペニスに刺激を与えていく。
自分でもそうした事などなかったのに、他人の手で刺激を与えられて、アキラは羞恥を感じるよりも
前に与えられた感覚に身を委ね、急速に絶頂へと向かい、声をあげて、緒方の手の中で放出した。


(23)
肩で大きく息をしているアキラの額にうっすらと汗が滲んで、生え際の髪が張りついている。
上気した頬と、うすぼんやりと開けられた目が、艶っぽい。
その顔と喘ぎ声に緒方は自分の鼓動が激しくなるのを感じた。
放心しているアキラの耳元に口を寄せて、こうささやく。
「よかったか…?」
「…?」
そしてその意味が届く前に、緒方の手がアキラのズボンのベルトに伸び、そして一気に下着ごと
引き下ろした。
「おがっ…!」
アキラの抗議の声など、緒方は耳にも入れず、
「…もっと、よくしてやる…」
シャツの中に手を滑り込ませると、胸の小さな突起を探し当て、軽く捻った。
「あっ…」
予想外の刺激に、アキラが思わず声を上げる。
その声を緒方の唇が塞ぐ。
自分の身に何がおきているかわからずにいるアキラに、緒方は執拗に刺激を与えていく。
丹念に、探るように、深いくちづけを与えながら、左手で身体を探り、乳首を弄ぶ。そして空いた
右手で器用にアキラのシャツのボタンを外していった。
アキラの身体が与えられた刺激に徐々に反抗の意志を失いつつあるのを緒方は感じた。
愛撫の手を止めないまま半ば身を起こしてアキラを見下ろすと、そこに目を閉じ眉根を寄せて、
押し寄せる快感に堪えようとしているアキラがいた。その口からは、喘ぎ声が漏れ始めている。
性的な予備知識をほとんど持たないアキラは、いとも簡単に緒方の与える快感に陥落していた。
緒方は一瞬、その顔を鑑賞したあと、スルリとネクタイを外すと、一気にアキラの身体をうつ伏せ
に返し、両腕を後ろ手に束ねた。


(24)
「あっ!?」
不意の攻撃にアキラが正気に戻って、抵抗しようとする。
「いやだっ…放せ…っ!」
けれどそんな抵抗をものともせず、緒方はその両腕を外したネクタイで縛り上げた。が、それ
でもなお、緒方の身体の下で、アキラが暴れる。
「くっ…大人しく、しろ…!」
が、なおも抵抗を続けようとするアキラの脚がテーブルを蹴飛ばした。
派手な音を立ててテーブルに置かれていたものが倒れ、何かが床に落ちた。
瞬間、二人の動きが止まる。
が、一瞬早く、緒方が動きの止まったアキラの身体をもう一度仰向けにし、肩を押さえつけて、
正面からアキラを見下ろした。
荒い息遣いと沈黙の中、微かな機械音がし、オーディオのランプが点滅するのを、アキラは
視界の隅で見た。
弾みでリモコンが作動したのか、唐突にスピーカーから音楽が流れ始めた。

その音は最初は小さな音量だった。
運命が扉を叩く音。
いや、違う。その響きはもっと陰鬱で重苦しい。
遠くで小さくならされていた一本のトランペットは次第に音量を増し、高らかにファンファーレを吹
き上げていく。そして、それが頂点に達した時、フルオーケストラの大音響が室内に鳴り響いた。
響き渡る音の中で、身体を押さえつけられたアキラと、押さえつけている緒方が対峙する。
視線を絡み合わせたまま二人が動けずにいるままに、音楽は不吉な予感を漂わせながら少しず
つ音量を下げていき、やがて重苦しい重低音がゆっくりと、ひきずるような行進曲を刻み始めた。
だが、この部屋の中で葬列の足取りは生け贄を祭壇へ運ぶ行進へと変化していく。
「なぜ…なぜ、こんな事をするんですか…?」
低い声で、アキラがそう問う。
「なぜ…?なぜだろうな?そんな事、オレにもわかるものか。」
そう言いながら緒方はアキラの首筋に唇を寄せた。


(25)
重々しい葬列のリズムの上に、バイオリンが静かにすすり泣くような旋律を奏で始めた。
その、哀切な旋律に合わせるように、緒方の舌はゆっくりと移動していく。
首筋から鎖骨へ、そこから胸元へ、そして小さな突起へ。緒方の舌の与える刺激に、口の中で
次第に輪郭を明確にしていくそれに軽く歯をあてると、アキラの口から小さな悲鳴が漏れる。
その悲鳴に応えるように、優しく、軽く、またキツく刺激を与えていくと、悲鳴が次第に甘い喘ぎ声
に変わっていく。
「いい子だ…」
アキラのその声に緒方は満足げに応え、今度は反対側の突起に愛撫を移した。
アキラに与えられる刺激は強く弱く波のように押し寄せ、その刺激に対する反応が頂点に達っし
ようとするその瞬間にさっと退いていく。その波は弄るように、焦らすように、一歩一歩、少しずつ、
だが確実にアキラを深い快楽の淵に引き摺り込んでいく。
緒方はアキラを味わいながら、アキラに問われた問を心の中で自分に問い直した。
なぜ?何も知らない純な少年を征服してみたいと思ったからか…?
あまりにも素直で初心なその反応が劣情を刺激したからか…?
そもそも、なぜ、今、アキラなのだ?
言い寄ってくる女は幾らでもいたが、自分から抱きたいと思った女などいなかった。
差し出されたものを、単にそのまま享受していただけだ。
それなのに、なぜ今、何も知らないような子供相手に、半ば強引にこんな行為に及んでいるのだ?
アキラの、とりすましたお行儀のいい顔を引き剥いで、その下に隠れている本当のアキラを見て
みたいと思ったからか…?
進藤ばかりを見ているアキラの目を自分に向けさせたいと思ったからか…?



450 名前:無題(補足・BGM紹介) 投稿日:02/05/05 16:30
マーラー作曲 交響曲第5番 嬰ハ短調
第1楽章 重々しい足取りで、きびしく、葬列のように
第2楽章 嵐のような激動、より大きな激しさで
第3楽章 スケルツォ
第4楽章 アダージェット
第5楽章 ロンド・フィナーレ



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