sai包囲網・中一の夏編 21 - 25


(21)
 こくんと微かに頷くのを確認して、進藤の手や指を傷つけないように
巻き付いたセロテープを切って剥がす。パリパリっという音に、進藤が
痛ってと小さく悲鳴を上げる。暴れた拍子にテープが食い込んで、手首
に赤い紐状の痣が残っていた。
 ボクが、進藤に、つけた印だ・・・。
 思わずくすりと笑いが漏れて、進藤はぎょっとしたように振り返った。
痛む手首をさすりながら、こちらを見上げている。
「塔矢?」
「じゃあ、続きをしようか?」
「つ、続きって!?止めてくれたんじゃないのかよ」
 キッと、こちらを睨みつけて来る大きな瞳に、ぞくぞくする。
「やめるなんて一言も言ってないけど?」
「そんな・・・」
「あのままじゃやり難いから切っただけだよ。キミもボクも初めてなん
だしね。それとも、saiと打たせてくれる気になった?」
「それは・・・」
「それは?」
 こくんと、まだ何の膨らみもないなだらかな喉が動く。
「それは、できない」
 分かった。それが、キミの答えなら、何の遠慮もいらないだろう。
 細い手首を捕まえて、もう一度背もたれへと押しつける。何とか押し
返そうと進藤は暴れたけれど、射精の倦怠感と下肢に残る痛みのせいで
その動きは鈍かった。
 大きく開いた白い脚、その間に身体を入れ、赤みの残る場所に猛った
ままの自身を捻り込んだ。
「やっ、いやぁぁぁ!!」


(22)
 二度目の挿入は最初よりもきつく感じられた。バタバタと暴れる進藤
の爪の先がボクの頬を傷つける。思わず手を振り上げかけたのを理性で
押し止めた。子供らしくふっくらと丸みのあるキミの顔を、ボクは思い
の外気に入ってるんだよ。殴って醜く腫れ上がらせるなんて、もったい
ないじゃないか。
 その代わりに、更に奥まで突き刺すように腰を押し進める。ボクの耳
にも淫猥に響く音に続き、進藤が悲鳴を上げた。商談に使うため防音を
施してある部屋でなかったら、人が飛んで来そうな悲痛な叫び声だった。
「いやぁ、あぁ、とぉや!!」
「くっ・・・」
 絞られるように締めつけて来る、進藤の中は熱く気持ちが良かった。
しばらく動くをのを止めて、はぁはぁと溺れた人間のように苦しそうな
息を吐き出す進藤の髪を撫でてやる。クーラーが効いた部屋の中でも、
こめかみや頬に汗が流れ、柔らかい髪が色を濃くしてそこに張りついて
いた。滲んだ涙を舌先で吸い取る。進藤の意識がそちらに向いた隙に、
ゆっくりと腰を動かした。
「はぁぁん、やぁ!」
 痛みだけではないのか、進藤の声音に甘いものが混じってる。
「やめ・・・」
「どうして?」
 こんなに感じてるのにと、わざと進藤が顕著な反応を返す場所を狙っ
て突き上げる。途端に、細い脚がボクの身体を挟み込むように締めつけ
て来た。
「ほら、ボクを放したくないって言ってるよ」
「違う、違う・・・」


(23)
 どうしてもキミが感じていることを認めないから、認めたくなるよう
にするだけだよ。この時間が長引けば長引くほど、ボクにとっては都合
がいいのだから。
 トロトロと淫靡な涙を零す進藤の陰茎を戒めたまま、根元から竿の先
までをゆっくりと擦り上げる。嬌声としか表せないものを零れ、無意識
に進藤の腰が揺れる。だけど、それも長くは続かなかった。
「とぅや、手ぇ、離して・・・」
 潤んだ目が懇願して来る。少し身体を傾けて顔を覗き込む。貫く角度
が変わって、新しい快感に進藤の唇を振るわせた。
「はぁ、あぁん」
「イキそうなんだ?」
「ん、塔矢、お願い・・・」
「そう。でも、ダメだよ」
「どうして?だって、もう、オレ・・・」
「ボクはまだだもの。自分だけイクなんて、ずるいだろ?」
 くすくすと笑いながら、更に進藤を追いつめる。揺れる身体を起こし
て必死にボクの手首を掴もうとするのが滑稽に見えた。
「やだぁ・・・!お願い許して・・・」
 ひっくひっくと横隔膜が痙攣を起こしたように動いた。それに連れて
進藤の内部が細かく震えるのが気持ちがいい。
「許して欲しいの?」
 奥歯を噛み締め、襲って来る絶頂に耐えながら、殊更何でもないかの
ように訊ねた。
「何でも・・・何でも言う通りに、する、からぁ・・・」
「嘘じゃないね?」


(24)
「嘘、じゃ、な・・・い」
「じゃあ、saiと打たせてくれる?」
 必死に頷いてはいるけれど、ちゃんと自分の言ってることが分かって
るのか怪しいところだ。
「いいよ。イカせてあげる。だけど・・・」
 約束を守らなかったら、こんなものじゃ済まないよ。そう最後通告を
した後、激しく進藤の中を掻き回し、散々悲鳴を上げさせてから、ゆっ
くりと戒めていた指を離した。途端に、勢いよく白いものが零れ落ち、
がくりと進藤の身体がソファーの上に落ちた。
 目尻から溢れた涙がふっくらとした頬から顎を伝って落ちる。苦しい
息を吐き出す唇から小さな赤い舌がちろちろと覗いていた。それに誘わ
れるように唇を寄せ、小さくキスをした後、床に転がったままのペット
ボトルを引き寄せ、中身を口に含んで進藤に飲ませる。
 身体を濡らすほど汗をかいたせいか、それとも泣き叫んで喉が渇いた
のか、進藤が水分を求めてボクの口の中に舌を伸ばして来る。淫靡と言
うよりは本能的に母乳を欲しがる生まれたばかりの赤ん坊のようだった。
「ケホッ、ケホッ」
 一気に飲み込んだせいで進藤が軽く咽せる。その背中を優しく撫でて
落ち着かせる。軽く自分の服装の乱れを整え、棚にしまってあったバス
タオルを二枚、引っ張り出してきた。
 進藤の中にすべて吐き出したボクはともかく、進藤は酷い有様だった。
最初の一枚で汗と下肢の汚れを拭い、もう一枚で進藤を肩からくるんだ。
 脚の間に身体を入れると、進藤の腰が引ける。
「まだ何かするのかよ」
 勝ち気な口調に反してその大きな瞳に怯えが走ったのを見て、ボクは
薄く笑った。


(25)
「中のものを掻き出すんだよ」
「か、掻き出すって、いいよ、そんなの」
「このままにしておくと後でお腹が痛くなるよ」
 本当かどうかは知らないが、確かそんな話を聞いたことがある。
「だったら、自分でやるよ!」
「いいけど、この部屋からは出さないよ。ボクの目の前でやる?ボクは
それでもかまわないけど」
「っ・・・・」
 それっきり黙ってしまった進藤を促して脚を開かせる。怖々と左右に
開かれた片方の太股に手を添え、軽く尻を上げさせるようにしてタオル
を下に敷き、ぷっくりと膨らみ紅く色を変えたそこにゆっくりと指を忍
び込ませた。
「ん、んー」
 必死に声を押さえていても、敏感になった中を探られる度に耐え切れ
ない呻きが零れ、びくんと腰から下が反応する。
「はぁ、ん・・・」
「厭らしいね。また汚すつもりなの?」
「お前が、変なとこ、触るから、だろぉ」
「変なところ、ね」
「あぁ、やっ!」
 くすくすくす。今、ボクに反論しようとしてもやぶ蛇だと気がついた
のか、進藤は自分の手を口に当てて、漏れそうになる声を押さえた。
 殊更じっくりと時間をかけて残液を取り除いた後、汚れたバスタオル
と一緒に散らばっていた服を拾い、窓際にある棚の上に置いた。
「あっ、オ、オレの服!?」



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