失着点・境界編 21 - 25


(21)
「えっ…、でも…、」
恥じらった表情を見せてアキラはヒカルの手を振払って行こうとした。
「浴びなくていいって言ってるだろ。」
感情の起伏の無いヒカルのものの言い方に、アキラはいつもと様子が違う
事を感じ取った。
「何かあったの?…進藤。」
「…何かあったのはそっちの方じゃないのか?」
「…どういう意味?」
アキラは直感でヒカルの言葉の意味を察知し、すぐに険しい目つきになった。
「へええ、疑っているんだ。ボクの事を…。」
ヒカルはフッと苦笑いした。図星だからだ。和谷の言っていた噂話が確かに
頭のどこかに引っ掛かっている。
「そうだよ。だから確かめたいんだ。お前がシャワーを浴びる前に。」
アキラの腕を掴む手に力を入れる。
「お前」と呼ばれて一瞬アキラは驚いたようだった。
「確かめさせてくれるよな、塔矢。」
強い態度のヒカルに対し、アキラはひどく動揺するような顔色に変わった。
微かに唇が青ざめて肩が震えている。視線もヒカルからそらしている。
「…わかったよ。」
視線をそらしたままアキラが答える。
「…好きにすればいいだろう。」
それがどんなにアキラにとって屈辱的な行為となるかは明らかだった。


(22)
ヒカルは視線をそらしたままのアキラの顎を持って顔を寄せた。だがアキラは
昼間のように唇を求めに来なかった。
ヒカルはあっさりとキスを諦めるとアキラのズボンのベルトを外した。
そしてベッドに横たわるよう視線で指示する。
「…明かり…」
アキラが小声で言う。
「消したら見えないだろ。」
今までの自分の事をまるっきり棚に上げたようなヒカルの対応にアキラは
唇を噛み締め、腹立だしさを抑えきれないように体を震わせていた。
ベッドに腰掛けたアキラから下半身の衣服を引き剥がし、うつ伏せに
寝かせる。アキラは怖いくらいに従順だった。
アキラの剥き出しになった双丘が蛍光灯のしたで白く浮かび上がる。
ヒカルもベッドに乗り、シャツをたくし上げて愛おしくその双丘を撫でる。
今まで冷静だった心臓がドクンドクンと少しづつ強まっていく。
アキラは人形のように動かない。
ここが…アキラの…
両手の平をそれぞれの二つの丘の上に置き、ゆっくりと左右に割る。
わずかにアキラが小さく声を漏らしたような気がした。
不思議な事にヒカルの心の中にこれからする事によってアキラを
失うかもしれないという不安は、微塵も起こらなかった。
むしろ、行き着くところまで完全に行か着かない事の方がアキラを失う事に
なりそうに思えた。


(23)
アキラの素肌はしっとりとヒカルの両手の平に吸い付くように密着し
ヒカルの手の動きに従って谷間の奥底を露にした。
ヒカルの視点は一ケ所に引き付けられしばらく動かせなくなった。
ほんのりと淡く色付いた、小さな火口。
良く見ないと分からない程の浅くて薄い皺の集中したその部分は、
予想していたものよりはるかに幼くて未発達な感じがした。
アキラと関係した後、ヒカルはあまりの痛さに恐る恐る自分のそこを手鏡で
見てみた事がある。
赤く腫れ上がったアヌスは、少し膨らんでかなりグロテスクに見えた。
ずっとこのままだったらどうしようかと思ったが、一週間位で腫れが退いて
ホッとした。
その事を思えば、少なくともこの数日は誰かがアキラのここに何かを施した
可能性は受け取れなかった。それ以前に、青く固く閉ざした果実はまだ
誰のものにもなっていないような雰囲気を漂わせている。
ヒカルは高まる心音のまま、手の位置を中央にずらし、さらに小さな火口を
押し開こうとした。
「…や…っ!」
さすがにアキラが反射的にヒカルの手から逃れて体をくの字に曲げ、肩ごしに
猛烈な抗議の視線を投げ付けてきた。そんなアキラをヒカルも睨み返す。
「まだ終わってないよ。…さあ、」
肩で息をしながら、うっすら涙さえ浮かべて無言でアキラはヒカルに怒りの
視線を浴びせ続ける。それを無視してヒカルはアキラの足首を掴むと引き寄せ
もう一度さっきと同じ姿勢を強制する。肉体的なアキラの抵抗はない。
だが気持ちの上でのピリピリとした拒絶感は痛い程伝わって来る。
手の平を火口近くに置いて指先で狭門を開く。
一瞬白っぽくなり、次第に赤みがかっていく内壁の様子が見えた。


(24)
幼い青臭さをたたえた狭門は強固な意志でヒカルの力に逆らい閉じようとした。
ヒカルはそのわずかな隙間に、右手の人さし指の先を宛てがう。
「ちょっと我慢してくれよ…。」
ヒカルは乾いたままの指先をアキラの中へ突き入れていった。
「…ッ!!」
アキラは身をよじってヒカルの指から逃げようとした。
「…動くなよ。できれば傷はつけたくないんだ。」
すでに指先の第一関節までを狭門に銜え込ませていた。
「…痛いよ…!」
「わかってるよ。早く済ませるから動くなって言っているんだよ。
…脚、もう少し開けよ。」
ヒカルは少しずつひねりながら指先を奥へ奥へと進める。
ヒカルはアキラの腸を内診するように指先に神経を集中させた。
痛いくらいに締め付けて来る肉壁はかつて此所に訪問者があったような
そぶりは全く見せなかった。誰かの残留物も、ローションの類いを塗られた
様子もなかった。ヒカルはゆっくり指を引き抜いた。
「…済んだよ。疑って悪かった。」
アキラは体を引き起こすと、バンッと激しく音を立てて手の甲でヒカルの
横っ面を殴った。唇の端が切れて血が滲んだ。
「…出ていけよ。」
声を震わせながらアキラがはき捨てるように言った。
だがヒカルは何も答えず、じっとアキラを見つめている。
アキラはベッドの上を少し後ずさった。ヒカルはその足首を掴んで引き寄せ
もう一度アキラの体をうつ伏せに組み伏せた。


(25)
ヒカルはそのままうつ伏せたアキラの腰のあたりに馬乗りになり、ほぼ外れ
かけたネクタイを取り胸の下に手を入れてシャツのボタンを外そうとした。
「やめろっ!進藤!、…ボクは本気で怒っているんだぞ!!」
アキラはシャツを抱え込んで怒鳴った。まるでしっぽの先まで毛を逆立てて
威嚇するネコのように。
「…オレも本気だよ。」
ヒカルはシャツを脱がそうとするのを止めて、以前より幾分長く伸びた
アキラの黒髪をそっと撫でた。
「本気でお前をオレのものにするって決めたんだ。…今まで、本当はずっと
迷ってた。オレ達がしていることは間違っているんじゃないかって。
だけどもういいんだ。もう迷わない。オレ達は間違っちゃいない…。」
アキラの背中から刺々しさが退いていくのが分かった。
それでもしばらくの間はアキラはシャツを抱えたまま動かず答えなかった。
「…お前の返事を待つつもりはないよ。」
力ずくでもそうする気でいたのだ。もう後戻りは出来ない。
ヒカルはアキラの下肢を割って強引に体を入れようとした。
「待って…!」
アキラが手を伸ばしてヒカルの腕を掴んだ。
「…キスしてよ…。…進藤…。」
ヒカルの体の下でアキラは仰向けになる。ヒカルはそっと顔を近付けアキラと
優しい長いキスを交わした。アキラは自らシャツを脱ぎ背中を向けた。
その背中から腰へとヒカルは順にキスを続けた。やがて双丘の谷間へ、
その奥へとゆっくりと舌を這わせていった。



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