夏 21 - 25
(21)
進藤が腰を落とすとともに、ボクも少しずつソコに呑み込まれていく。
「………くぅ……ァ……はぁ……」
「ん…進藤…いいよ……」
もうボク自身は半ばまで呑まれている。進藤は両手でボクの頭を抱えて、一気に腰が
沈みそうになるのを堪えた。ボクも彼の身体が崩れてしまわないように、両手で進藤の腰を
支えた。
「ゆっくり……ゆっくりだよ…」
「ン……んん……アァ……」
進藤は大きく喉を反らせて、そのままボクの腕にがっくりと崩れ落ちてきた。
「…………全部入ったね…」
ボクは、進藤の瞼と言わず鼻と言わずメチャクチャにキスをした。彼は、大きく胸を喘がせながら、
ボクのキスを目を閉じて受け入れていた。
上下する進藤の胸に触ってみた。小さいはずの突起は、触ってもいないのにもうぷっくりと
膨れている。
「進藤、イヤらしい…」
含み笑いで囁くと、彼は顔を真っ赤にして首を振った。
「オ…オマエがいけないんだ……オマエが意地悪だから………」
「ボクが意地悪だから、キミのココが勃っちゃったの?」
グリグリと指で押し潰すと、彼は小さく呻いて仰け反った。
「可愛い………」
調子に乗って摘んだり弾いたり。そうやって弄るたびに、進藤の身体は跳ね、ボクの腹に
自身を打ち付けた。
「あ、あ、やだ………!やだぁ……意地悪………」
進藤が、ボクの左肩に顔を伏せた…と、同時にその部分に熱い焼けるような痛みが走った。
彼が、噛み付いたのだ。
(22)
ボクがビックリして、顔を向けると、進藤は瞳に涙を滲ませて、それでも睨み付けてきた。
“噛んでヤッタ。ザマーミロ!”とばかりに、口角が微かに上がっている。
ときどき進藤は、こんな風にボクの予想が付かないようなことをする。大人しくやられっぱなしでは
ないのだと言いたいのだろうが、ボクにしてみれば子犬がじゃれているくらいにしか思えない。
肩も背中もヒリヒリと刺すように痛むが、そんなことはどうでもいい。ボクは、彼のことが、
もう、可愛くて可愛くて仕方がないのだ。
「いけない子だね……」
ボクは、進藤の腿を少し持ち上げて、ストンとおろした。
「あ!いやぁ!」
たったそれだけでも彼には相当な刺激を与えたらしい。
「うぅ〜トウヤのバカヤロ………」
「“おいた”をするからだよ…」
進藤がボクを睨んだが、無視して彼の唇にチュッと音を立ててキスをした。
「………ゴメンね?」
顔を覗き込んで謝った。でも、彼は顔を赤くして向こうを向いてしまった。照れているのか?
それとも、拗ねているのかな………?
ボクは、進藤をギュッと抱きしめて、身体を上下に軽く揺すった。
「ァ、あ、あ、や………」
「意地悪はもうやめるよ…」
言い様、大きく突き上げた。
(23)
「ン、んん、あぁん………」
進藤が、甘い吐息とともに、ボクの膝の上で揺れている。
「ア……ハァ…アン……」
ボクの両肩に手を掛けて、胸を反らすようにして喘いでいた彼が、前に倒れ込んできた。
彼の鼓動が直に伝わってくる。
肩に添えられていただけだった手が、首を回りボクを強く抱きしめる。耳を熱く刺激する
喘ぎ声と熱い吐息が、強く、大きくなるに連れ腕の力が増していく。
―――――痛!
背中に焼けた火箸を押しつけられたような鋭い痛み。進藤がボクの背中に爪を立てたのだ。
かろうじて、声を堪えた。さっきまで、ボクの身体を気遣ってくれていた彼は、今はどこかに
姿を隠してしまったらしい。
しかし、ボクは気にしていない。彼の愛くるしい顔が苦悶と悦楽の狭間で、揺れ動いている様を
こんな間近で鑑賞することが出来るのだから………これくらいどうということはない。
ボクは、密着している胸の部分を引き離し、汗で濡れた前髪を優しく払いのけた。ソレなのに、
彼は髪を振り乱し、再びボクの胸にしがみつく。
「アァ、トウヤ…トウヤ…ァ、ハァ………」
掠れた声でボクの名を呼び続ける彼をあやすように、小さく身体を揺さぶった。
「あ、ダメ、ダメ…ダメ…イッちゃう…イッちゃうよぉ…」
そのときが近いことを告げる彼に合わせて、立て続けに大きく腰を突き上げた。
「トウヤ………!」
背中に食い込んでいた指先が力を失い、静かに下ろされた。
ボクの胸に頬を押しつけてぐったりと目を閉じている進藤の身体を、二度三度と強く
揺さぶった。身体の中で荒れ狂っていた熱は、出口を求めて一点に集中する。ブルブルと
身体が震え、目も眩むような快感にボクは大きく息を吐いた。
(24)
次の日、また海に行った。ただし、進藤は煌めく水の中、ボクはといえばビーチパラソルの下で、
はしゃぐ彼を指を銜えてみていることしか出来なかった。
今日一日は大人しくしているようにと、彼に強く言い渡されて、一人日陰で読書だ。
確かに、この背中ではシャツを脱いで、人前に肌をさらすことなど出来ない。日焼けの熱は
落ち着いたものの、そこには進藤がつけた爪痕がきっちりと残っていた。
ボクは、静かにページを繰っていく。だけど、本当はキラキラと太陽よりも眩しい笑顔を
見せる彼の姿に気をとられて、読書どころではなかった。
時折、ボクに進藤が手を振る。ボクも笑顔でそれに答える。手を振った後に溜息を吐いて、
再びページに目を落とす。そして、またいつの間にか進藤を目で追っている。それの繰り返し。
退屈そうにしているボクの側に、進藤が戻ってきた。ボクの前にペタンと膝を付くと、耳に
唇を寄せて囁いた。
――――――アッチに行かない?
悪戯っぽい笑みを浮かべて、進藤が岩場の方を指さした。もちろん、ボクに異論があるわけがない。
最初と同じページにしおりをはさみ直して、ボク達はふざけながら、秘密の場所へと駈けて行った。
(25)
本当に夢のような二日間だった。もう、帰らなければならないなんて………すごく残念だ。
ボクは窓の方に目を向けた。ゴトゴト揺れる列車の窓から、海が遠ざかっていくのがみえた。
さっきまではしゃいでいた進藤は、ボクの肩に凭れ掛かって、可愛らしい寝息を立てている。その寝顔を眺めながら、ボクは思い出に浸る。
こんがりと小麦色に焼けた彼は、いかにも健康的で美味しそうだった。水着に隠されて
いた部分とのコントラストは素晴らしく美しく、ボクが溜息を吐いて見とれていると、
彼は頬を染め、シーツで身体を隠してしまった。
それを宥め賺して邪魔なシーツを剥ぎ取る。コレも実に楽しい作業だった。ちょっと
オヤジが入っているかもしれないと思った。どうやら、相手もそう感じていたらしい。進藤は
可愛い唇をプッと突き出して、『オヤジ!』と憎まれ口を叩いた。もちろん後で、そんな
生意気な口をきけないようにしてやったけどね。
『ア………や……ァン……ゴメン…トウヤ……ゴメンなさぁ…ア、ア、あぁ―――――ッ』
マズイ………変な気分になってきた。でも、止まらない。ボクの記憶の引き出しは、一度に
全部開け放たれた。
次から次へと蘇る甘い甘い二日間。あんなコト、こんなコト、いろんなコトをいっぱいした。
それに………いつもの進藤とはまるで違う奔放な彼を見ることも出来た。外ですることを
承諾し、自分から行為を強請る彼………そんな彼をお腹いっぱいになるまで堪能できたのだ。
そんな彼を知っているのは自分だけだと思うと、自然と唇が上がってしまう。
――――でも、流石にココではエッチさせてくれないだろうな〜〜
ボクは肩に感じる進藤の体温を意識して、大きく溜息を吐いた。
………本当に夏はいい。ボクは夏が大好きだ。夏はなんと言っても進藤が開放的になる。
気温が上昇するに連れ、彼の熱も上がるらしい。
これから、季節が移り進藤の小麦色の肌も少しずつ色が抜けていく。それとともに、彼の
ガードも再び強固になるだろう。薄物だったシャツが、一枚余分に羽織られ、剥き出しの
素足もガッチリと強固な布に覆われてしまう。
だから、それまで、ボクはもっと夏を満喫しようと思う。今度は、山に行く計画を立ててみよう。
きっと、進藤も喜ぶはずだ。
でも……とりあえず、今はコレを何とかするしかないか………自分の股間にそっと手を置いた。
ボクは、駅に着くまでの長い時間、修行僧もかくやの苦行に耐えることとなった。
おわり
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