弄ばれたい御衣黄桜下の翻弄覗き夜話 21 - 25
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それを門脇は、自分の体をその足の間にいれることで邪魔した。
その行為に焦れて、芝生の上を足掻くヒカルの足首を捉えて、門脇はその腿を大きく
Mの字に固定する。
指を三本に増やすと、ヒカルの中心が高く持ちあがりはじめ、その声はますます官能
の濃度を増した。
門脇が指をギリギリ入り口まで戻すたび、中にあった生暖かい精液が、とろりとろりと
そこから出て落ちる。
その様子を眺めながら、門脇は、すぐ横に立てられたヒカルの足の膝の頭に舌を
這わした。そこは白くて柔らかそうで、まるでレアチーズケーキのように美味し
そうに見えたのだ。舐めてみたそこは、ヒカルが情交に流した汗の塩辛い味がした。
その味を口に含みながら、門脇はヒカルの秘腔に押し包まれた指で、その場所が
どんどん熱さを増しているのを感じる。
門脇は、その秘門の締め付けから、まだ余裕があるような気がして、もう一本指を
増やしてみた。
そこに指を四本も飲み込んで、ヒカルが桃色の声をあげる。
(享楽的な体だな)
指を動かす。四本も入るとさすがにいっぱいいっぱいで、自由自在に蠢かすことは
出来なかったが、それゆえに、指を入れているそれだけで、ヒカルの猥褻な中の壁を
同時に押し広げ圧迫することになり、ヒカルがすすり泣くようなよがり声を上げた。
指をまとめて出し入れすると、ヒカルの押さえきれない嬌声が、更に門脇の耳をくす
ぐる。門脇は、手を伸ばし、あらわにされた腹の上をさすり、薄い皮膚の下のあばら
の感触をほおずりで感じた。
ヒカルは、快感にびっしょりと汗をかいている。
門脇は、よりヒカルを翻弄するように、その指使いを激しくした。
ヒカルの口から切迫した声が漏れる。
そのヒカルの様子を見ながら、門脇はふと、ヒカルが悦楽にのめり込めばのめり
込むほど、冷めて冷静になってきている自分に気付いた。
高いところから、この少年を見下ろし観察している自分がそこにいた。
門脇の性技のひとつにも過剰に反応を返し、翻弄されるヒカルを目の前にして。
いつもこの少年に翻弄される側の自分が、いまは彼をいいように振り回している。
それは例えようもない、精神的な快楽だった。
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ヒカルが肉付きの薄い手足をつっぱらせて、たまった熱を吐きだした。
その奔流がおさまらないうちに、門脇は、指の引き抜かれたそのヒカルの下の口に、
自分のモノを押し入れた。
予期しない衝撃に、ヒカルが快楽のためとも痛みのためともつかない悲鳴をあげた。
門脇のそれは、一息入れたことと、ヒカルの痴態を視姦し続けたことで、すっかり張り
を取り戻している。
それでヒカルの中を犯しながら、門脇はやはりどこか冷たい視点で、ヒカルを観察
し続けていた。
入れられた当初は、苦しそうに眉を寄せているくせに、それがだんだんと解けて、
恍惚とした表情の中に消えてゆく。
行為が進むにつれ、呼吸が浅く速くなり、吐きだす息には嬌声がまじる。
その嬌声も、門脇が何度も腰を突き上げるうちに、 最初に混じっていた苦悶の
響きが消え、いつの間にか、甘えるような猫撫で声になっている。
この少年は、今まで誰にこの極上の表情を見せてきたのか。その男にも、こうして
甘えた声を聞かせたのか?
しかし、それも今は自分のものだ。進藤ヒカルはこうして自分に組み敷かれ、喘ぐこと
しか出来ずにいる。
ヒカルの腰が、門脇の腰の動きを追うように動き始めていた。
本当にこの身体は、驚くほど淫奔にできているらしい。
ヒカルの目は開いてはいたが、その表情は陶然として、視線は宙を泳いで定まらない。
オーガズムを迎える直前の女の表情とおんなじだ。
ヒカルの内壁で細かな痙攣が起きて、再び少年の精液が放たれた。さすがにその色は
だいぶ薄くなっている。
いきつく瞬間のヒカルのなんとも言えない表情に、色欲が刺激され、門脇も呻き
ながら再び中に放つ。
一瞬引きつった二人の身体が、重なって崩れ落ちた。
少しの間をおいて、門脇が体勢を返るために、身体を起こした。
その時だった。それまで心がどこかへ飛んでいってしまったみたいな表情をして
いたヒカルが、驚くような早さで、門脇の下から這い出て、自ら下肢を門脇の楔
から引き抜き、逃げ出そうとしたのだ。
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だが、それも最後の無駄な抵抗で、むなしくその腰を門脇の筋肉質な腕に、がしり
と捉えられる。
「そんな格好でどこに行こうっていううんだよ」
ヒカルは、靴と靴下こそはそのまんだったが、その他に身体を覆うものはTシャツ
一枚だ。
下肢は夜風にさらされたまま。
掠れた声でヒカルが訴えた。
「放してよ。もう、やめてよ、門脇さん」
ヒカルのその泣き出しそうな声も、冷えた門脇の心には届かなかった。
門脇が強い力で、汗でTシャツが貼り付いているその背中を引き寄せた。
抵抗して、ヒカルの手が近くの桜の木にしがみつく。
膝をついて、桜の幹を抱える格好になったヒカルの尻を強引に突き出させ、門脇は
有無を言わさず、後ろからヒカルを貫いた。
「うあぁ……ぐっうっ……」
(すぐに、感じていい顔になるくせに)
目をきつく閉じて苦痛に耐える顔のヒカルに門脇は思いながら、腰を強く前後に
ゆすり始める。
「やだ、……っっ、もぉ苦しい…、苦しいよぉ……」
苦しい息の間からやめて欲しいと懇願する声を無視して、その腸壁の一番感じる
場所を中心に、激しく突き立て、抉るように押し引く。
その後ろの穴に、自分のモノが何度も沈み、またギリギリまで引き抜かれる光景を、
冷静に見ている自分が門脇自身の頭のどこかにいた。
「くぅん、んっっ、っっっくっ、やだ…ぁ……」
普通に責めることに飽きて、大きく腰を回すようにして動いてみる。
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「あぁぁぁぁぁぁっっ!」
思った通り、最初は腸壁の限られた場所でしか受け付けられなかった蹂躙の快楽を、
今のヒカルは、その内壁全体で受け止めているように思えた。火照り、熱をもった
内壁のどこもかしこもが敏感な性感帯になっているのだ。確かに、こんなに絶え間
なく全てで快感を感じていては、呼吸する暇さえ無く、辛いだろう。
「んんぁっ、やめ……、くる……くるし……んはっ」
門脇は、自分のものをヒカルのそこにしっかりと根元まで詰め込んで、中を掻き回した。
「んんいっ、いやっ、苦し…っ、ぁああ、いいっ、いいっ」
「苦しいのに、いいのかよ」
門脇が笑った。ヒカルが乱れれば乱れるほど、冷静になっていく自分がいる。
ヒカルは、門脇に刺し貫かれたまま、喘ぎ、涙を零し始めていた。
涙を零しながら腰を振っていた。
「おまえ、こんな格好で男に犯されてイイなんて、マゾの気があるんじゃないか?」
よがり声を上げる事で精一杯なヒカルはそれに答えない。ただ、その目からポロポロ
と落ちる涙が、外灯の光りを反射して光って、門脇にヒカルが感じている快楽の度合い
を教えた。
それを冷めた目で眺めながら、門脇は支配者の快楽に酔った。
これほどの甘美な感覚を、門脇はかつて感じたことはない。
「ぁはぁぁっ、んぁ、ぁぁぁああ、イク、イッちゃう……っっ!」
その叫びを心地よく聞きながら、門脇はヒカルの中に沈ませた楔を、左右に大きく
動かした。
「――――――ぅぅあああっッん!!」
ヒカルの体がこらえ切れずに、しがみついていた桜の木を手放し、その根元に
沈んだ。
同時に、繰り返される情交に薄くなった精液が吐きだされる。
持ち上げられていた下肢も、そのまま芝生の上に落ちそうになったが、皮膚をまだ
ヒクヒクとさせているその腰を、門脇は、腕ですくうように持ち上げて支えた。
門脇の方はまだ終わっておらず、ヒカルの中で固く熱をこもらせている。
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「おまえ、雌犬みたいに背中から入れられる方がいいみたいだな」
前から抱いていた時とは、明らかにその官能の度合いが違っていた。
「言えば最初から、こうやって抱いてやったのに」
ヒカルは、門脇の腕に背中から拘束されて、ただなすがままにされている。
外灯しかない薄闇の中、その表情は、乱れた金の前髪に隠されてわからない。
門脇が、腰を打ち付け始めると、すぐに嬌声が漏れ始めた。
そこに行為の最初には確かにあったはずの悲痛さはすでになく、ただ体の奥から
込み上げる痺れにこらえきれず喉を震わせているような、甘い旋律だけがあった。
手を伸ばして、長い前髪をかき分け、わずかな明りをたよりに表情を確かめる。
ヒカルは、眉を切なげに八の字によせて、この快楽の拷問に耐えていた。
「おまえを仕込んだその男と、どっちがいいよ? え?」
「ぁ……は……はん、あぁぁ、…」
もとより、この状況で門脇は、ヒカルの返事を期待していなかった。
「俺の方が上手いだろ? んん?」
門脇はヒカルの耳元に囁きながら、前にまわした手で、へその周りをまさぐり、
乳首を弄ぶ。
ヒカルの声が、いっそう高く闇を打つ。その手が、力なくすがるものを探して地面
を這い、短い春の芝生を掴んだ。
この淫虐な尋問の最後の仕上げをするために、門脇はヒカルの体を芝生の上に体重で
押しつぶすように押さえつけ、深くその内蔵をこねまわし、掻き回した。
「イイッ、あぁぁぁっ、っ、イッちゃう! またイッちゃう!」
「ああ、イケよ」
ヒカルの肢体に、繰り返し大小のバビンスキー反射の痙攣が走るのを、門脇はその
体全体で感じた。
狭道に打ち込まれた肉の楔も例外ではない。
激しく波打つように動く内壁に引き絞られ、そのあまりのきつさに、門脇も低く
喘ぎながら、その壁に自分の体液を何度も打ち付けた。
ヒカルの手に力が入って、プチプチプチと掴まれた芝生が抜ける音がした。
「あーーーーーっ!!」
ヒカルの喉が最後の歓喜の悲鳴を上げる。
それは人気のない夜の公園に、例えようもなく淫靡に染み渡った。
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