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(21)
男のセリフに、アキラはグッと言葉を詰まらせた。
――ここでボクが下手なことをしたら、進藤はもっと酷い目に遭うに違いない。
アキラは悲痛な面持ちで、しばらく黙り込んだ後、
「…分かった。ボクをどうとでも好きにすればいい。だが進藤は…進藤だけは帰してやってくれ!」


(22)
進藤にこれ以上の恥辱を与えはさせない!そう言ったアキラの目は、一点のよどみもなく、その真剣な眼差しは、真っ直ぐ男達を見据えていた。
「そっか。むしろありがたいよ・・・」
薄笑いを浮かべ、おもむろに右手を掲げたかと思うと、アキラの頬めがけて振り下ろす。
「塔矢ッ!!」
ヒカルが叫ぶのと、アキラが吹っ飛んだのは同時だったろうか、アキラの、標準よりも小さめの頭がトイレの壁に打ち付けられる。真っ直ぐな髪が乱れ、唇の端には血らしきモノが見えている。
「塔矢ッ!塔矢っ!!!大丈夫かっ!?」
懸命に呼びかけるヒカル。大きな目が潤みその瞳が揺れている。
「……てめぇらっ!っざけんじゃねーー!」
「早く…進藤を離してやってくれ…。…頼む。」
静かに、しかし確かな声でそれを言うアキラの眼光は男達を見据え冷たく、鋭かった。
男達は顔を見合わせ、何事かヒソヒソと囁き合うと、背の低い方がヒカルを着替えさせ、トイレから出ていこうとする。
「塔矢っ!逃げッ…ウワっ!」
アキラの身を案じるヒカルの言葉も、ものすごい力で腕をねじり上げられ、口を塞がれたせいでみなまで言うこともできなかった。そんな自分に、大丈夫だよ、と微笑んでみせるアキラの強さに、ヒカルは胸が締めつけられる気がした。何でそんな風に笑ってられんだよッ!
「さぁ、まずは何からしてもらおうかな…?」
背の高い男は、アキラの細いあごに手をかけ、低い声でそう呟いた。


(23)
アキラは深呼吸をして、静かに瞼を下ろす。
自分ならナニをされても構わない。ボクはこれくらいで傷ついたりしない。
(…進藤…)
「じゃあ手始めに、俺のからしゃぶってもらおうか。塔矢アキラくん?」
男はアキラの耳もとで囁くと、クックッと下卑た笑みを漏らした。
「――」
アキラは覚悟を決めたのか重い瞼を上げ、顎を掴んでいた男の手を軽く払いのけると、うつろな瞳でゆっくりと男の足元にひざまずいた。


(24)
アキラは手を伸ばし、淫猥にそそり立った眼前の物体を握った。すでに膨張しきって堅く張り詰めたその汚らしさに、アキラの手からスッと血の気が引いてゆく。
だが大丈夫だ、とアキラは思った。心は何も感じていない。
…麻痺した様に。
「くくく…ッ、そうだ、いいぞ!さあ、もっとしっかり握ってみろ!」
上から振ってくる下卑た声を完璧な無表情で受け止める。
(嫌だ、塔矢!!そんな事するなっ!やめてくれ…!!)
背後から体を拘束され口を塞がれたまま、目の前で起こっている出来事に耐えられずにヒカルは必死でもがき叫んだ。
「ん、んんっ!んんン……ッ!!」
しかしヒカルを絡め取る男の腕は益々きつくヒカルの体を締め上げるばかりだった。
(塔矢、塔矢……!)
アキラはわずかに眉を寄せ、ヒカルに目を向けぬまま低い声で言った。
「進藤、見るな」
いっそ冷たいともいえる突き放した口調だった。


(25)
「キミには、見せたくない。だから見るな」
アキラの声はヒカルの心に刃のように突き刺さった。
(塔矢…っ!)
アキラの言葉を決意の言葉と受け取った男達がヒヒヒ、と笑声を上げる。
「この坊ちゃん、やる気満々だなぁ。随分物わかりがいいぜ」
「さっさとやれよ、口に入れるんだ!噛むんじゃねえぞ!」
見開かれたヒカルの大きな瞳から、透明な涙が頬を伝って滑り落ちた。
「ンんん……っ!」
力一杯、男の腕から逃れるためにヒカルが暴れている。
そんなヒカルが痛ましかった。
(大丈夫だ進藤。キミがされるより、ボクがやる…)
アキラは表情を映さない白い顔をうつむけ、膨れ上がった男の陰茎を品の良い唇にためらいなく含ませた。



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