裏階段 三谷編 22


(22)
ただその事を思い知るのはもう少し後の事である。
中学校は「先生」の母校を勧められた。「先生」とそこの学校長とでの話もついていたらしい。
が、結局他の学校に通う事になった。父親が選んだところだった。でももうそんな事はどうでも
良い事だった。「先生」はそれを親の愛情だといい週末の土日だけは自宅に戻る事を提案し、
オレはそれに従った。自宅に帰っても家族が居るとは限らない事が多かったがそんな事は「先生」に
伝える必要のない現実だった。あの人の元で碁を学べる。それだけで十分だった。
凍り付いていた時間は縁側から差し込む陽の暖かさで急速に溶かされていった。
伯父から学んだ打ち方が何の一片も残す事なく自分から抜け落ちるとは思わなかった。
早朝「先生」と共に起き一局を打つ。「先生」より早く起きたかったがそれはかなわなかった。
深夜に酔って帰って来た伯父に叩き起こされて碁を打たされた日々が日差しの光を浴びる毎に
薄らいでいくようだった。伯父が遺していったものが碁の精神と技術だけだったなら、
少なくとも知らず知らずに体が学び取り体に染み付いたものがそれだけであれば幾らでも
新たに学ぶものによって変化させ発展させあるいは凌駕していけたのだが。

彼の両手がこちらの肩を掴んで爪を立ててきたが皮膚に食い込むほどの力はなかった。
比較的長く続いた絶頂感を知らせる痙攣の後、締め付けるようにこちらの腰にかかっていた
彼の両足から力が抜けていき、同様に彼の両手がこちらの肩から滑り落ちていった。
強引に重ね合わせていた唇を離すと一瞬嗚咽のような彼の吐息が漏れたが彼自身がすぐに
制した。下腹部で彼が放った精の生温かさがこちらのシャツを通して伝わってくる。
彼は未だ自分の中で何ら変化を見せないこちらの存在に自分がまだこの場所から解放されない事を
感じとったようだった。



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