平安幻想異聞録-異聞- 22
(22)
「……わかりました」
佐為の言葉にヒカルがパッと顔をあげる。
「私も内裏に行くのをやめます」
「はぁ〜〜〜〜??」
驚いて立ち上がりかけたヒカルだが、まだギシギシという体と、
ほとんど感覚がないままの下半身ではそれもかなわず、
目の前の佐為の腕の中に崩れ倒れる形になってしまった。
佐為はその細い体を胸で受け止めた。
「ヒカルを近衛の家に送っていって、そのままヒカルが床から逃げ出さないか、
ずっと見張っていましょう」
「な、何言ってんだよ、おまえ。仕事ざぼるつもりか?」
「ヒカルじゃあるまいし…。ちょっと風邪を引いたことにするだけです」
「それをさぼるってんだよ!」
「もう決めました。ヒカルがなおるまで、私はヒカルの傍に付いていることにします」
「治るまでって…、そんなのお前みたいな重要人物に許されるわけないだろう!」
「重要人物でも風邪はひくし、風邪をひいたら仕事は出来ないんです」
「帝の囲碁指南は!」
「帝に風邪が移っては大変ですからねぇ」
「だけど…!」
「それにね、ヒカル」
ヒカルの目の前で、佐為の美しい顔が、花が咲くようにほころんだ
「今の私には、帝より、ヒカルの事の方がずっと大事なんですよ」
ヒカルは、黙って、香の焚きしめられた佐為の白い狩衣の胸に顔をうずめた。
佐為はズルイ。
そんな風にやさしく甘やかされたら、もう自分には何も言えないじゃないか……。
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