金魚(仮)(痴漢電車 別バージョン) 22


(22)
 ヒカルは、尚もアキラを責める。
「オマエがオレを連れてきたくせに……」
その言葉に、また混乱しそうになった。自分がヒカルを何処に連れて行ったというのだ?
ここのことを言っているのだろうか?
「自分の想像と違ったからって…ほっぽり出して…知らん顔して…」
ヒカルは手の甲で目を何度も目を擦りながら、しゃくり上げた。
「オマエがこっちの世界に連れてきたくせに…!」
 そこまで言われて、漸く気が付いた。ヒカルが言っているのは囲碁のことだということに………
―――――確かに、返す言葉もない………
だが、あの時は期待していた分ショックも大きかった。彼の言うところの“ほっぽり出した”
時でさえ、本当のところ気になって気になって仕方がなかった。
―――――要するに、ボクは素直じゃないんだ………
ことヒカルに対しては余計にそうなってしまう。そのくせ、他人に彼をバカにされるのは
ガマンならない。
 ヒカルに関しては、全て自分に優先権があると勝手に思いこんでいる節がある。自分でも
いけないことだとわかってはいるのだけど………
―――――彼を貶しても良いのはボクだけだ……それから、彼の良いところも理解しているのも
ボクだけだ………他の人の目に触れさせたくないんだ………
 ヒカルは俯いて泣きじゃくっている。ヒカルの言葉は、本心からか酔っているためかは
判断つきかねた。
 
『……………あれ…?前にもなんかこんなことがあったような気がする………』
ヒラヒラしたスカート。右へ左へヒラヒラヒラヒラ。軽やかに…泳ぐように…ふわふわ…
ヒラヒラ……ベンチに広がるヒカルのスカート。色が赤なら、まるでガーベラの花のようだ。
………花?…ヒラヒラと水の中を漂う小さな赤い花…それから、大きな目…悲しそうな…
 そして、アッと小さく叫んだ。
―――――思い出した……!
アキラはヒカルの姿に重ねていたものを漸く思い出した。



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